大学生活を送りながら、一般社団法人こどもの笑顔弁当で活動をされている東大生の鴫山泰仁(しぎやまやすひと)さん。鴫山さんが活動に携わるようになったきっかけや、活動に対する思いをインタビューしてきました。
●こどもの笑顔弁当に携わっている方々のインタビュー
笹裕輝さん:
“世の中に明るいニュースを届けたい”コロナ禍でスタートした活動
みんなの思いがつまった幸せのスパイラル
一人でも多くのお母さんに笑顔になって欲しい
小さな幸福体験を積み重ねていくことの大切さ
MASSATTACKさん:
自分にできることは何か?模索する中で始めた寄付の活動
多方面へアプローチするのが僕の役割
寄付をしないことがダサいとされる世の中にいつかなるかもしれない
お金ではないものに価値を見出す時代へ
こどもの笑顔弁当と鴫山さんの関わりについて
-現在大学生活を送る一方で、こどもの笑顔弁当の活動に携わっているとのことですが、そのきっかけは何だったのでしょうか?
僕は幼い頃に父が亡くなり、母子家庭というバックグラウンドがあるのですが、そうした中で、”ひとり親家庭に無償でお弁当を届ける活動があるんだけど、それに参加してみないか?”と声をかけてもらったことがきっかけですね。そんな活動があることは全く知らなかったので、とても興味を持ちました。
– こどもの笑顔弁当での鴫山さんの役割をお聞かせください。
正四面体を考えてもらうと分かりやすいのですが、こどもの笑顔弁当の仕組みとしては、寄付をしていただいたお金を、飲食店・配達・ご家庭の3方向に流し、その正四面体の中心に僕たち運営がいるイメージです。その中での僕の役割は全体を統括することで、全方向とコミュニケーションを取っています。また、代表の笹さんを始め皆さんが新しいコネクションを作ってくださるので、その方々との関係を構築していくことも僕の役割です。
– 活動する中で大学生である強みを活かしていると感じる部分はありますか?
周りに大学生がたくさんいるので、上手に大学生を巻き込んでいきたいと考えています。もちろん寄付をしてもらうことは大切ですが、大学生に毎月1万円の寄付をお願いするのは厳しいですよね。けれど、拡散してもらって認知を広げていくことなら可能だと思います。
大学生の強みは、拡散力があることと色んなことに興味を持ってくれやすいということだと感じています。1人につき500円を募金してもらって、そのお礼にご飯を食べている子どもたちの写真やお礼の手紙を渡すといったように、まずはお金のハードルを下げて、こういう活動をやっているんだよと認知を広げることを目指しています。
こどもの笑顔弁当の活動に参加する中で感じたこと
– 活動する上でのやりがいをお聞かせください。
僕は運営側なので毎回配達することはできませんが、配達に入ったときはご家庭の皆さんとお話するようにしています。とあるご家庭へ伺ったときに、”しぎにいちゃんへ”という自分宛の手紙をもらえたことは、とても嬉しかったですね。このように感謝の言葉をかけていただいたり皆さんの笑顔を見れることに、やりがいや喜びを感じています。
– 逆に大変だと感じる部分はありますか?
先ほど申し上げた3方向のコミュニケーションは全て僕を経由するため、それらを上手にまとめることが難しいと感じています。僕たちの活動は、人と人との繋がりだけでできていると言っても過言ではありません。皆さんの思いを崩さないために、信頼関係を構築することはとても大切だと思います。
例えば、お弁当の受け取りに配達員が遅刻したら、飲食店の方の思いが下がってしまいますよね。その責任は、管理している僕にあります。現在は、何かトラブルが起きても言いやすい環境を作ることができているとは思いますが、まだ課題はあるように感じています。
– 学校生活との両立についてはいかがですか?
今は何とか両立しながらやっているという感じです。新たにインターンを始めたこともあり、さらに忙しくなりました。また、テニスサークルの新歓の代表もやっているので、場をまとめたり盛り上げたりということもやっています。そんな人間がこどもの笑顔弁当の活動に携わっていると言うと、いい意味でびっくりされ、そのギャップに興味を持ってくれる方が多いです。
– 周りのお友達の反応にはどういったものがありますか?
友達の反応は本当に様々です。素直にすごいなと感じてもらい、実際に配達員に加わってくれる友達もいる一方で、偽善じゃないの?と思っている人もいると思います。
僕は優等生ではありませんでしたし、母子家庭ということも周囲に言ってなかったので、何でそんなことやっているの?と思っている人も少なからずいるような気がします。非営利の活動に対する意見は人それぞれですので、ある意味仕方ないかなと感じています。
活動に対する思い
– 活動する上で大切にされていることをお聞かせください。
この活動はたくさんの人の思いの上で成り立っているので、その思いを壊さず大切にしながら、どのように伝えていけば良いのか、また寄付をしてくださる方に、いかに気持ちを返していけるか、ということを考えながら動いています。
– 活動していく中で見えてきた課題はありますか?
寄付をしてくださる方がいて、安い価格でお弁当を提供してくださる飲食店の方がいて、じゃあ自分たち運営は何をすべきなのか、そのことを考えたときに、ひとり親家庭の皆さんの感謝の言葉を、支援してくださる方まで届けることではないのかと思うようになりました。僕たちが感謝されるのはもちろん嬉しいことではありますが、その感謝の思いを繋がっているところまでしか渡せていないので、コミュニケーションや伝達の仕方が課題だなと感じています。
– 活動への原動力を教えてください。
僕は女手一つで育ててくれた母にとても感謝しています。母に、親孝行して恩返しするねと言ったら、そういう気持ちは下に伝えていくんだよ、と教えてくれました。なので、今の活動に対して、喜びを見出すだけではなくて、その良さをどんどん伝えていきたいと思っています。このような思いと母への感謝の気持ちが、今の活動の原動力になっていると感じています。こういった社会活動はずっと続けていきたいですね。
また、若い自分がやるからこそ意味があるのかなとも思います。僕の活動に感銘を受けてくれた若者たちが立ち上がって、動き出してくれたらとても嬉しいです。
忙しい中でも社会活動を続ける鴫山さんの姿勢は、色んな方の共感を呼んでいると思います。次回は、鴫山さんご自身についてのお話や、社会活動に対して若者目線での考えをお伺いします。