ごみを減らす取り組みとして推進されているのが『3R』です。ごみ問題は地球温暖化にもつながるため、注目を集めています。3Rについて詳しく知りたい人のために、意味や推進の背景・日々の暮らしでできる3Rの取り組みを見ていきましょう。

3Rの意味を知ろう

人間の生活が便利になるとともに増え続けるごみは、世界中で問題になっています。3Rはごみを減らし、限りある資源を有効活用していくために必要な、三つの取り組みの総称です。

ごみそのものを減らす「リデュース」

『リデュース(Reduce)』は使い捨てを減らし、物をできるだけ長く大切に使うことでごみの発生を減らす取り組みです。

日本ではリデュースがあまり進んでいません。環境省の資料によれば、2019年度のごみ総排出量は4274万t(東京ドーム約115杯分)、1日に1人あたりが出すごみの量は918gです。

何かを買うときは『長く使えそうか』『修理は可能か』など、耐久性をチェックしましょう。本当に必要かどうかをよく考えるのも、リデュースの一環になります。

参考:環境省_一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和元年度)について

繰り返し使う「リユース」

『リユース(Reuse)』は、繰り返し使うことを指す言葉です。基本的には不要になったものを、そのままの状態で別の人に再利用してもらうことを指します。

サイズアウトした子ども服を下の兄弟の『お下がり』にしたり、使わなくなったカバンを譲ったりするのが一例です。不用品をフリーマーケットやオークション、リサイクルショップに持ち込むのもリユースにあたります。

ただし、傷みや汚れのひどいものをリユースしてもらうのは避けましょう。自分がもらって使えるかどうかを基準にすると、判断しやすいはずです。

再利用する「リサイクル」

『リサイクル(Recycle)』は不要になったものを、そのままではなく分解したり燃やしたりして再利用する取り組みです。

使い終わったものを資源として再利用する『マテリアルリサイクル』と、焼却の際に発生した熱をエネルギーとして利用する『サーマルリサイクル』があります。

マテリアルリサイクルの対象になるものには、瓶やアルミ缶・スチール缶・ペットボトル・新聞紙などがあります。家電製品から使える部品を取り出して再利用するのも、マテリアルリサイクルです。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、回収された携帯電話や小型家電から抽出した金・銀・銅で作ったメダルが採用されました。日本でもリサイクルの取り組みが進んでいるといえるでしょう。

ただ、総リサイクル量は2019年度時点で19.6%と、決して十分ではないのが現状です。

3Rを推進する背景と目的

3Rが推進されているのは、環境問題が原因です。地球温暖化や異常気象など、地球環境には深刻な変化が起こっています。環境問題の現状と、3Rで目指す社会の姿を見てみましょう。

地球環境の悪化が背景

かつては大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会が、繁栄の証とされていました。しかし近年では、地球環境の悪化を受けて『持続可能な循環型社会』へと理想がシフトしつつあります。

人口増加や経済発展によって、世界中で資源の需要・消費量が増えるとともに、ごみの量も急激に増加しました。廃棄されるごみや処理の過程で発生する二酸化炭素・焼却灰は、地球温暖化をはじめさまざまな環境問題を引き起こしています。

ごみが増える一方で、資源は先細りが予想されています。このままでは、残るのはごみと破壊された地球環境だけという事態にもなりかねません。

目指すのは「循環型社会」

3Rの目的は循環型社会の実現です。では、循環型社会とはどのような状態なのでしょうか?循環型社会が実現した場合のサイクルは、次の通りです。

  1. 廃棄物を抑制(リデュース・リユース)
  2. 廃棄物の中から資源として使えるものを取り出す
  3. 焼却による熱エネルギー(サーマルリサイクル)→埋め立てによる最終処分(適正な処分)
  4. 資源として再利用(マテリアルリサイクル)→1.に戻る

この循環を作ることで、ごみを減らせるだけでなく新たな資源の浪費も抑制できます。実現するには一人一人が循環型社会のサイクルを意識し、行動する必要があるでしょう。

参考:環境省_パンフレット一覧 | 環境再生・資源循環局

ごみが増え続けることで起こる問題

ごみが増え続けると、地球環境がさらに悪化することが予想されています。主にどのような問題が議論されているのかを知っておきましょう。

不法投棄による海洋や土壌の汚染

近年注目を集めているのが、不法投棄(ポイ捨て)による海洋ごみの問題です。特に海洋ごみの約66%を占めるとされるプラスチックごみは、自然に分解されるまでに長い時間がかかるため、環境への影響が大きいとされています。

ペットボトルなどのプラスチックごみが紫外線や波によって細かく破砕された、『マイクロプラスチック』の問題は深刻です。回収が困難で広範囲に蓄積されやすいことから、生態系への影響が懸念されています。

マイクロプラスチックは海洋だけでなく、土壌汚染につながる恐れもあると指摘されています。土壌や地下水に蓄積されれば、生態系だけでなく人間の体に影響を及ぼす可能性もゼロではないでしょう。

参考:
今さら聞けない海洋ごみ問題|増え続ける海洋ごみ|日本財団
How plastic is infiltrating the world’s soil|United Nations Environment Programme (UNEP)

焼却による二酸化炭素排出量の増加

地球温暖化の主な原因は、二酸化炭素の過剰な排出です。工場からの排煙や車・バイクの排気ガスによるものだとは広く知られていますが、ごみ問題とも関係しています。

ごみを焼却すると発生する二酸化炭素は、燃やすものが多くなれば排出量も増えることになるでしょう。ごみを集めて処分場へ運ぶ収集車も、ガソリンで動いています。処分すべきごみが増えると、二酸化炭素の排出量が増加するのです。

ごみを埋め立てるにしても、適切な処理をしなければ、地球温暖化の原因の一つであるメタンガスの発生につながる恐れがあります。

毎日の生活で実践できる3R

地球環境の悪化を食い止めるためには、わたしたち一人一人が3Rを実践していくことが必要です。まずは意識してごみを減らしてみましょう。他にも毎日の生活の中で実践できる3Rを紹介します。

ごみを意識して買い物をする

ごみを減らす(リデュース)は、3Rの中でも実践しやすい取り組みです。買い物のときに「ごみになるものはもらわない」と意識するだけでも、日々の生活で出るごみを減らせます。

マイバッグを持参して、レジ袋や紙袋はできるだけ断るようにしましょう。プラスチックや発泡スチロールの容器を使用したものは極力買わず、最低限必要なものから出たごみは資源ごみとして正しく出します。

買いすぎにも注意が必要です。「安いから買っておこう」ではなく、使いきれる分だけの買い物を心がけましょう。

レンタルやリサイクルショップを活用する

自分がいらなくなったものでも、必要とする人が他にいるかもしれません。まだ使えるようであれば、バザーやリサイクルショップなど、引き取り手が見つかりそうなところに持ち込んでみましょう。

海外旅行用の大きなスーツケースをはじめ頻繁に使わないものは、買わずにレンタルショップを利用するのもおすすめです。リユースとリデュース、どちらにも貢献できます。

ごみをしっかり分別する

瓶や缶などの資源ごみは地域のルールに従って分別し、指定日に出しましょう。ただ、新聞や雑誌などの紙類は地域の子ども会や新聞販売店が回収していることもあります。

生活リズムや仕事の関係で指定日に出せなければ、地域で行われている回収活動をチェックするのも一つの手です。

また、テレビ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機の家電4品目は、法律でリサイクルが義務づけられているため粗大ごみとしては出せません。代わりに家電量販店で引き取ってもらったり、指定の取引場所に持ち込んだりして処分します。

比較的新しい家電なら、リサイクルショップに持ち込むのもよいでしょう。

参考:家電4品目の「正しい処分」早わかり!|家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)|経済産業省

まとめ

「たくさん買って、たくさん捨てる」という生活スタイルは、いまや過去のものとなりました。次の世代に美しい地球を残すために、環境に配慮しながら限りある資源を活用する時代になりつつあります。

3Rはその第一歩といえるでしょう。何かを買う前や不要になったものを捨てる前に考えてみるだけでも、3Rの実践につながります。ごみの増加で環境問題をこれ以上深刻化させないためにも、できる対策から始めてみましょう。