再生可能エネルギーは持続的なエネルギー源としてだけでなく、地球温暖化対策にも有効とされています。一方、再生可能エネルギーには課題があるのも事実です。推進される理由や個人で取り組める解決策とともに、再生可能エネルギーの課題を考えましょう。
そもそも再生可能エネルギーとは?
再生可能エネルギーは、化石燃料や原子力に代わるエネルギー源として世界中で導入が推進されています。まずは再生可能エネルギーが何を指すのか、正しい知識を備えておきましょう。
自然の力を利用するエネルギー
再生可能エネルギーは、地球上に存在する自然の力を利用したエネルギーです。二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスをほとんど排出しないことから、『グリーンエネルギー』とも呼ばれています。
主な再生可能エネルギーには以下のものがあります。
- 太陽光
- 風力
- 水力
- バイオマス(動植物由来の有機性資源)
- 地熱、太陽熱などの熱エネルギー
再生可能エネルギーは、基本的に日本国内のどこでも調達・生産できるのがメリットです。石油燃料や原子力からの切り替えによって、地球温暖化対策になることも期待されています。
参考:再生可能エネルギーとは|なっとく!再生可能エネルギー(資源エネルギー庁)
日本における再生可能エネルギーの現状
2021年10月に資源エネルギー庁が発表した資料では、2019年度時点で日本の再生可能エネルギー(水力を含む)の発電比率は18.1%(水力発電を含む)でした。他のエネルギーが未だに80%以上を占めているということです。
日本の再生可能エネルギーの発電比率は、欧州諸国をはじめ世界の主要国の中では低い水準にとどまっています。まだ化石燃料への依存度が高いといえるでしょう。
しかし、日本でも再生可能エネルギーの発電電力量は、年を追うごとに上がっています。2020年度には2010年度と比べて、再生可能エネルギーの年間発電電力量が1.9倍も増えました。
日本では特に太陽光発電の伸びが目覚ましく、2020年度には2010年度の約22倍にも上っています。
参考:
国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案|資源エネルギー庁
【速報】国内の2020年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況|ISEP 環境エネルギー政策研究所
日本で再生可能エネルギーが推進される理由
再生可能エネルギーの導入推進は、世界的な流れになってきています。日本も例外ではありません。諸外国と足並みをそろえるだけでなく、日本特有の理由も知って理解を深めましょう。
地球環境に負担がかかりにくい
再生可能エネルギーの最大のメリットは、エネルギーそのものの熱や動力を使って発電するため、温室効果ガスをほとんど排出しないことです。
地球温暖化の深刻化から二酸化炭素排出量の削減が急務とされる現在、日本でも再生可能エネルギーの導入が急がれるのは当然でしょう。
また、再生可能エネルギーは掘削やくみ上げの必要がなく、エネルギー源は日本中のさまざまな場所で調達が可能です。災害時のエネルギー供給に役立つことも期待できます。
枯渇や廃棄物の心配がほとんどない
石油や石炭、天然ガスといった化石燃料は限りある資源です。使い切ればエネルギー源がなくなり、電力を供給できなくなってしまいます。
しかし、再生可能エネルギーは太陽光や風力など、物理的に減らないものに由来します。化石燃料と違い、エネルギー源が枯渇する心配はありません。
火力発電によって生じる焼却灰などの有害物質や、原子力発電でできる放射性廃棄物のような廃棄物が出ないのも、再生可能エネルギーのメリットの一つです。発電によって負の遺産を残しません。
日本のエネルギー自給率が低い
日本が再生可能エネルギーの導入を推進する理由に、資源が少なくエネルギー自給率が低いことが挙げられます。
日本はエネルギー供給の大部分を化石燃料に頼っている上、そのほとんどが輸入です。エネルギー自給率は2018年度時点でわずか11.8%にすぎません。
日本には台風や地震などの自然災害が多いという事情もあります。2011年の東日本大震災のとき、都心部の計画停電を経験した人もいるでしょう。2019年9月の台風15号では、神奈川県内で14万戸が停電しました。
いずれも太陽光発電システムが普及していれば、大規模な停電は防げたかもしれません。災害時にも電力を維持するために、日本の再生可能エネルギーの導入は急務といえるのです。
参考:エネルギー白書|資源エネルギー庁
再生可能エネルギーには課題もある
再生可能エネルギーはメリットばかりではありません。本格的な導入を実現するには、課題とされているデメリットへの対策が必要です。具体的に何が課題になっているのでしょうか?
発電コストが高い
再生可能エネルギーの課題は、大がかりな設備と広大な土地が必要なことです。エネルギー密度(単位面積あたりどのくらい発電できるかを表す指標)が低いため、どうしてもコストは高くなります。
例えば太陽光発電では、火力発電と比較して2倍の広さの発電施設が必要です。しかし単位面積あたりの発電電力量は、火力発電の約2600分の1にすぎません。
また、太陽光発電システムの費用も、非住宅用の場合はヨーロッパの2倍かかると試算されています。
参考:
再生可能エネルギーの課題 [関西電力]
再エネのコストを考える|広報特集|資源エネルギー庁
安定した大量供給が難しい
安定した大量の電力供給が難しいのも、再生可能エネルギーの弱点です。太陽光発電や風力発電は、発電した電力をためておくことができません。
全面的に再生可能エネルギーに切り替えてしまうと、発電システムに不具合が生じたときにはたちまち電力不足に陥ります。
天候や気象条件に左右されやすいのも、デメリットでしょう。必要な電力を確保できない、逆に発電量が過剰になるという可能性もあります。
再生可能エネルギーの導入を推進するなら、不安定な発電力をカバーする方法も準備しなくてはなりません。100%を再生可能エネルギーに頼るのは、現状では難しいのです。
地域の住民とのトラブルが起こり得る
国や自治体主導で再生可能エネルギーの推進を行う場合、発電システムの設置に関して地域住民とトラブルになる可能性があります。
設置場所や条件などに対して地域住民から合意が取れていなかった、景観が損なわれるといった問題が原因として挙げられるでしょう。
太陽光発電パネルをはじめ使用した機器が寿命を迎えたり撤去が必要になったりしたときに、適切に処分されるかという問題も無視できません。
国や自治体側が導入を推進する際は、適切な説明を行い、地域住民の不安や疑問を取り除いて了解を得ることが必須となります。
課題解決に向けて個人ができること
再生可能エネルギーの導入に伴う課題は、個人レベルでもある程度は解決が可能です。一人一人が少しでもできることを実践すれば、本格的な導入の助けになるかもしれません。
自宅に太陽光発電パネルを設置する
自宅の屋根や敷地内の空いたところに太陽光パネルを設置することで、自分たちで使う電力を自宅で調達できるようになります。光熱費の大幅な節約が可能になるだけでなく、電力が余れば電力会社に買い取ってもらうこともできます。
「パネルを置く場所はない」「マンションだから無理」という人は、ベランダに小型のソーラーパネルを置くのがおすすめです。スマートフォンや蓄電池の充電に利用したり、災害時に備えたりしてもよいでしょう。
節電を心がける
節電を意識した生活も、再生可能エネルギーの課題を解決するためにできる行動です。再生可能エネルギーが本格的に導入された際に、電力供給が不安定になる可能性も考えて省エネを心がけましょう。
- 使っていない電化製品は主電源を切り、コンセントを抜く
- エアコンの設定温度は適正にする
- 省エネ家電への買い替えを検討する
大切なのは、意識して電気を使うことです。電気代の請求書をチェックして、自分が毎月どのくらい使っているか確認してみるとよいでしょう。節電のために何をすればいいか、考えるきっかけになるはずです。
まとめ
再生可能エネルギーは、地球温暖化対策や将来の地球のために必要なエネルギーです。本格的な導入には課題もありますが、解決のために国や自治体・個人も一丸となって取り組む価値が十分にあるといえます。
再生可能エネルギーの導入が進めば、日本もエネルギー自給率を上げられるでしょう。再生可能エネルギーは人間の快適な生活と地球環境の両立を可能にする、まさに未来のエネルギーなのです。