このたび、特定非営利活動法人オン・ザ・ロード一般財団法人日本寄付財団の2021年度助成事業の助成先に選ばれ、オン・ザ・ロード理事長の高橋さんと日本寄付財団代表理事の村主さんとの対談が実現しました。第2回目は高橋さんの魅力について迫っていきたいと思います。

高橋さんのこれまでについて

村主 高橋さんは、冒険をストイックにやり続けるのではなくて、その過程を楽しんでいる印象がありますが、子ども時代からそのようなタイプだったのでしょうか?

高橋 0歳からこんな感じでしたね。1,000人くらいの団地に住んでいたのですが、 “みんな学校行くぜー!” みたいなノリでしたよ。リーダーという意識はあまりなく、自然とみんなをまとめていた気がします。

村主 その点では高橋さんと僕は対局の人間だなと感じています。ぼくはどちらかというとしっかり準備して設計して、リスクやリターンを総合的に計算し、常に勝率を考えながら生きてきてしまったところがあります。高橋さんのようにワクワクを原動力に行動されていることは、僕にはない面なのでとても魅力に感じています。いい意味でのハラハラ感があるのでみんなを巻き込むし、だからこそみんなに応援されるのでしょうね。

高橋 僕は何かをやるときには、チームを作らずにまずは勝手にやり始めます。ちょっと確信犯なのですが、一人でやっていたら気づくとチームになっていた、そんな感じですね。チームがないと何も成立しないし、全部自分でやるなんて考えたことはありませんでした。だから僕はチームという言葉が本当に好きなんです。

村主 さすがの巻き込み力ですね。海外への興味は学生時代からあったのでしょうか?

高橋 実は昔はあんまり興味がなかったのですが、きっかけは奥さんですね。結婚するときに”なんでも夢を叶えてやる!”って宣言したら、”無理なの分かっているけど、世界一周旅行をしたい”って言われたんです。僕も言ってしまった手前、後には引けなくなり、当時経営していた出版社を譲って、結婚式の3日後に出発しました。世界が面白いと思うようになったのはそこからですね。

村主 それまであまり世界を旅したいと思われていなかったのは意外です。世界一周に出るとき、肩書きをリセットする怖さはなかったのでしょうか?

高橋 当時は今と違ってインターネットがないので、旅をしながら仕事を継続するのは現実的ではありませんでした。あと、僕はゼロからイチを作り上げるのが好きなので、一度作ったものを譲ることに対する怖さはありませんでした。既にあるお店を10店舗、100店舗に広げていくよりも、出版社をゼロから始めるほうが面白そうだという感じですね。

村主 そもそもなぜ出版社を作られたんですか?

高橋 23歳のときに、友達と ”本屋さんの自伝コーナーに自分の名前があったらかっこいいよね!”とか ”無名の一般人が自伝を出すなんて面白いよね!”みたいな話になったんです。そこで色々調べたのですが、素人が本を出版するのはやはり難しいことが分かったので、”こうなったら自分たちでゼロから出版社を作って、そこから出せばいいじゃん!”とそんな軽いノリで作りました。そしたら高校生の女の子から、”死のうと思っていたけど、あなたの本を読んで頑張る気になれました”という手紙が来て、本は人の人生を左右するんだなと気づき、そこから出版の世界にグッと行きましたね。

村主 一番フラットに高橋さんを知ってもらうためには、どの書籍がおすすめですか?

高橋 奥さんとの世界一周を書いた ”LOVE&FREE” 、自分なりの人生の地図が描ける言葉集 ”人生の地図”、そして25歳のときに書いた自伝 ”毎日が冒険” の3つですね。最後の本は漫画や芝居にもなっていますよ。舞台化もされました。

高橋さんの活動について

村主 社会活動にはネガティブピースとポジティブピースという言葉がありますよね。世界の平和に関して、マイナスをゼロにしようとするのがネガティブピースで、病気の人たちや食べられない子どもたちを助けようというものです。それに対して、ポジティブピースは、ゼロをプラスに持っていくこと、例えば教育や人生の充実に目を向けた活動を指します。高橋さんの活動は、ポジティブピースに該当するのかなと思います。

教育よりも、まずは食べられない人を助けるべきだという意見や、スポーツやダンスができる人は幸せだ、恵まれているといった意見があります。高橋さんはこのようなことを言われた経験はありますか?

高橋 直接言われたことはありませんが、自分で思ったことはありますね。活動の初期の頃は、特にその葛藤がありました。けれど難民キャンプやスラムの人たちに実際に触れ合ったりすると、ポジティブピースもネガティブピースと同じくらい大事だなと感じるようになりました。健康や食事が満たされているだけだと、自分の人生設計は進められません。1日1日をどう生き抜くか、そんな目の前のことで精一杯な生活環境では夢や希望を持つことは難しいですよね。

村主 ネガティブピースの意見も分かりますが、食事ができたら何でもいいのかという議論もあります。人間としての充実、例えばアートやスポーツといったような子どもたちの願いを叶えてあげたいですよね。これこそ高橋さんの活動の魅力だなと感じています。

高橋 もちろんネガティブピースの素敵な活動をされている方がいることは大前提です。そして食べ物や病気をケアすることは大切ですが、貧困の状態から抜け出すきっかけをつくり、人生の充実を図っていくことも同じくらい重要であると感じています。難民キャンプでは、さぁ来年どうしようかという話も、家族内で一切できず、精神的におかしくなるという話をよく聞きました。夢や希望を持つことは本当に大切なんですよ。

村主 食や家をどうにかしようという団体はたくさんありますが、高橋さんのような活動をされている団体はなかなかありません。そしてこの活動は、高橋さんにしかできないと僕は思っています。なぜなら高橋さん個人の性格はもちろんのこと、周りの方を巻き込むという総合的な力が働いているからです。これこそオンリーワンな魅力ですよね。

高橋 僕は自分のことを文化祭の実行委員長のようだと思っています。僕の周りの色んなジャンルの人たちが、みんな共通して抱いているのは、”困っている人のためになんとかしたい”という思いです。一流になればなるほど、その思いを持っているように感じていますが、なかなかそれを実現するチャンスがないので、僕たちが機会を提供しているんですよね。

村主 点で存在している色んな能力値の方々を、まとめていく力や惹きつける力は本当にすごいと思います。この非営利の業界で、食や医療ではないエンタメのところにアンテナを貼って、そこに人を巻き込んでいく、そんな難しいことは他の団体にはできないことではないでしょうか。それこそが高橋さんやオン・ザ・ロードさんの魅力だと思います。

高橋 ありがとうございます。僕たちの活動に共感してワクワクしてくれる人や一緒に取り組んでいく仲間をもっと増やしていきたいと思います。

高橋さんの人間力なくしては語れないオン・ザ・ロードさんの活動、今後のご活躍をとても楽しみにしています!