このたび、一般財団法人日本寄付財団が行う2021年度助成事業の助成先に一般社団法人ニューワールドアワーズスポーツ救命協会(以下、NWHスポーツ救命協会)が選ばれました。NWHスポーツ救命協会代表の蝶野さんは日本寄付財団のアンバサダーを務められていることもあり、今回蝶野さんと日本寄付財団代表の村主さんとの対談が実現しました。

第1回目は蝶野さんの現在の活動や助成の件についてお二人に語っていただきました。

蝶野さんと社会活動について

村主 :一般の方の蝶野さんのイメージは、プロレスラーだったり年末のテレビに出ている人、というものがほとんどですよね。蝶野さんが社会活動に携わっていることを知らない方のために、このような活動へ参加するきっかけについて教えていただけますか?

蝶野:プロレスというのは興行なので、地域貢献のような形で日本全国を回り、老人ホームを訪問したり障がい者の方を招待したり、そういった活動は実は若手の頃から経験してきました。俺が社会活動について意識し始めたのは、新日本プロレスを退団した2010年頃です。

退団して一人になったときには何かをしなければならない、とずっと思っていました。多くの芸能人の方が社会活動をされている中で、自分にできることは何だろう、と自問自答を繰り返すうちに、プロレスと関係の深いものの一つである、救急救命が選択肢として浮かび上がってきました。

村主:NWHスポーツ救命協会の活動を始めた背景には、蝶野さんが選手をされていた中で、ご自身を始め色んな選手が怪我や事故をされたことの影響はありますか?

蝶野:その影響はとても大きいですね。2005年に橋本選手、2009年に三沢社長が亡くなり、業界的にも歯止めをかけていこうと動き出しました。NWHスポーツ救命協会は、AEDの普及を目指し啓発活動を行いながら、救命活動を推し進める団体で、2014年に設立しました。防災のルールや自助についても伝えるお手伝いもしています。

村主:活動を始めてみて、AEDの認知などは進んでいると感じますか?

蝶野:若い世代の方が、119番の通報とAEDの手配についてセットで知ってくれている印象がありますね。俺らの世代は何かあっても119番くらいしか思いつきません。救急車が到着するまでにできることがあるんだ、ということを知らない人はとても多いです。

村主:街のどこにAEDがあるかを把握できている方は、ほとんどいないでしょうね。

蝶野:AEDが設置されていてもその事実を知らないとか、知っていてもそもそも使い方が分からないという場合が大半を占めています。ですので119番とAEDについては、小・中学校くらいから授業でちゃんと教えて欲しい、という気持ちが強いです。

日本寄付財団からの助成について

村主:今回日本寄付財団の助成事業に応募してくださいましたが、その動機についてお聞かせください。

蝶野:NWHスポーツ救命協会の運営は、企業さんで形成される賛助会からいただくお金でやりくりしていますが、基本的に赤字です。事務もみんな何かの仕事と兼任しながらお手伝いをしてくれているので、常にカツカツな状態です。イベントにおいても、本来は自分たちでリングを組むといった自主的な形を取りたいのですが、毎回様々なところへ協力金をお願いしている状態です。

2022年はコロナの状況を見つつ、ここ2、3年でできなかったことをちゃんとやっていきたいと思っています。去年から進めていたイオングループさんとの防災イベントが、これから始まる予定です。それに向けて自分たちも準備をして、色々と動き出していく段階にあります。どうしても手が回らなかったり、資金的な面で足りないものがあったりするので、今回応募させていただく運びとなりました。

村主:このような活動には当然お金が必要になりますが、その資金集めの時間というのは結局非効率になってしまうんですよね。蝶野さんがとても真剣に活動をされていることがとてもまっすぐ伝わってきましたし、日本寄付財団が支援させて頂くことによって、少しでも蝶野さんの活動のお役に立てたらなという思いがありました。

また、蝶野さんが持つエネルギーは他の方とは全然違うと思います。そのような方が、社会活動に関する発信をしてくださることに、とても価値があると感じています。これまで蝶野さんがプロレスだったり防災だったり、様々な活動を通じて気が付かれたことを世間に伝えていただいて、それを見た僕たち一般人が少しでも何かを感じ取ることができればいいなと思い、今回の支援させていただければと思いました。

– 具体的な資金の使い道というのは、既に決まっているのでしょうか?

蝶野:コロナの影響もあって、これまではどちらかといえば小規模なイベントが多かったのですが、今回支援いただけたこともあり、少し大掛かりなことをやっていきたいなと思っています。午前中から夕方くらいまで、ショッピングモールの施設を使って大型のリングを組んだりして、その地域の人たちに向けたイベントをやっていきたいですね。そこで俺がナビゲーターになって、消防や救急隊の方達にAEDや心肺蘇生の実演をしてもらったり、子どもたちに実際にリングに上がってもらったり、というようなことを考えています。

村主:リアルな体験は、何事にも変え難いものがありますよね。このようなイベントを通じて蝶野さんの活動が広がっていくことを期待しています。

AEDの認知度を上げていくことを始め、様々な活動をされている蝶野さんですが、日本寄付財団からの助成で、今後の活動の幅がどんどん広がっていくのではないでしょうか。次回は、蝶野さんが日本寄付財団のアンバサダーに就任されたことについて語っていただきます。