地球温暖化や海洋汚染など、世界中でさまざまな環境破壊が起こっています。自然環境を取り戻すためには、どうすればよいのでしょうか?いま起こっている環境破壊の種類や歴史・個人ができる対策を知って、環境破壊への取り組みを始めましょう。

環境破壊が注目されるまでの流れ

環境破壊は急に起きたわけではありません。問題として注目される以前から、人間の活動によって進行してきたのです。何がきっかけで環境破壊が始まりなぜ問題視されるようになったのか、現在に至るまでの流れを解説します。

始まりは産業革命

環境破壊のきっかけとなったのは、18世紀半ばから19世紀のイギリスで始まった産業革命です。蒸気機関や工業機械といった技術が進歩するにつれ、石炭や石油などの化石燃料がエネルギー源として多く使われるようになっていきます。

新たな技術の登場や経済成長によって、人々の生活は便利で豊かになりました。しかし代償として、大気汚染や水質汚濁といった環境破壊が起こり始めます。蒸気機関や工業機械の排出する二酸化炭素・ばい煙・工場から流される排水などが原因でした。

産業革命をきっかけとして、石油燃料の利用や新たな技術は世界的に広がっていきます。しかし、環境への影響が考慮されることは長い間ありませんでした。

1970年代には世界で問題視されるように

1970年代になると、環境破壊が世界中で問題視されるようになります。1960年代の急激な工業化・都市化により、大気汚染や水質汚染などが深刻化したためです。

日本でも、四大公害病(水俣病・新潟水俣病・イタイイタイ病・四日市ぜんそく)をはじめとする産業公害の増加が、すでに注目されていました。

世界中が危機感を抱く中、スウェーデン政府の提案により国連は1972年に『国連人間環境会議(ストックホルム会議)』を開催します。会議では環境破壊への対策が協議されました。

1992年にはストックホルム会議の開催20周年を記念して、地球環境保全を話し合うために『地球サミット』が開かれます。

地球環境に関しての国際的な議論は現在も続いており、ますます重要視されている状況です。2015年の国連サミットで採択された『SDGs(持続可能な開発目標)』では、環境破壊を食い止めるための目標がいくつも掲げられています。

世界で起きている主な環境破壊

日本はもちろん、世界中の国々が自然を取り戻すための対策に乗り出しています。しかし、環境破壊が現在進行形で起きていることも事実です。地球の未来をよりよくしていくために、いま何が起きているのかを原因と併せて知っておきましょう。

地球温暖化

地球温暖化は、環境破壊の事例として真っ先に挙げられるでしょう。温暖化は二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスにより、地球の温度が上がってしまう現象です。

化石燃料や有機物の燃焼によって発生する二酸化炭素には、太陽から得た熱の一部を地球にとどめ、地球の大気を暖める性質があります。適温の範囲なら温度が上がっても問題はありません。

しかし、近年は過剰な二酸化炭素の排出によって、地球全体が温室のように暖められすぎている状況です。平均気温は上昇し続けており、海面の上昇や異常気象の増加といった影響が問題になっています。

将来的には、さらに平均気温が上がることも確実視されているのが現状です。

参考:気象庁|IPCC第5次評価報告書

大気汚染

大気汚染は、産業革命の時代からあった環境破壊の一つです。現代でも自動車の排気ガスや工場からの排煙などに含まれる有害物質が、大気中に放出される問題が起こっています。

大気汚染とは、大気中の有害物質を自然が持つ自浄作用では処理しきれなくなった状態です。排出量が多すぎたり、浄化できない物質が含まれていたりすると起こります。呼吸器系疾患の原因にもなり、人体への影響も少なくありません。

海洋汚染

海洋汚染の原因は、人間が海に廃棄した油やごみ・生活排水などです。海水が汚染されることにより、海の生態系に深刻な影響を及ぼすと指摘されています。海洋生物がすみかや産卵場所を失ったり死んだりすれば、漁獲量の減少にもつながる問題です。

特に注目されているのが、『マイクロプラスチック問題』です。ストローやレジ袋・ペットボトルのふたといったプラスチックごみが紫外線や波によって破砕され、細かくなったものがマイクロプラスチックです。

分解されずに残り続ける上に回収が困難なため、海洋生物が誤食して死んだり体内に蓄積されたりする可能性が指摘されています。

森林破壊

国連食糧農業機関(FAQ)よると、2010〜2020年に世界中で年平均470万ヘクタールの森林が減少しました。

森林は光合成で二酸化炭素を吸収し、酸素を排出しています。森林破壊は二酸化炭素の吸収量を減らし、地球温暖化に拍車をかける現象です。

森林破壊によって、野生動物の減少や絶滅が起こる可能性もあります。森林は地上の面積の約3割を占め、そこには多種多様な野生生物が暮らしています。野生動物が住む場所を失えば、生態系の破壊にもつながるでしょう。

参考:森林・林業分野の国際的取組:林野庁

明日からでも始められる対策

環境破壊に対して、わたしたち個人には何ができるのでしょうか?地球を守るために明日からでもできる、手軽な対策からチェックしてみましょう。

ごみを減らす・分別する

「ごみは燃やせばいい」と思っていませんか?しかし、ごみを焼却すると二酸化炭素が発生し、地球温暖化の進行を後押しすることになります。焼却灰の埋め立ても必要になるため、まずはごみを減らすことが環境破壊を食い止める第一歩です。

例えば、料理の作りすぎや食材の買いすぎは廃棄する食品の増加につながります。献立を考えたり、冷蔵庫の中身をチェックしたりしてから食材を買うのがおすすめです。外食するときは、食べきれる量だけを注文しましょう。

また、エコバッグを常時携帯すれば、急な買い物でもレジ袋をもらう必要がありません。レジ袋は有料になっている店が多いので、節約にもなります。

ペットボトルの飲み物を買わなくて済むよう、水筒を持ち歩く習慣を付けるのもごみを減らすためにできる工夫です。

節電・節水を心がける

環境対策として、日常生活で使用する電気や水にも意識を向ける必要があります。エネルギー庁の資料によると、2019年の日本では、エネルギー供給の8割以上が火力発電です。

日本は火力発電がメインとなっており、二酸化炭素を発生させる化石燃料が多く使われています。日本で節電を意識することは、二酸化炭素排出量の削減につながるのです。

また、水が各家庭に届くまでにもエネルギーは消費されているため、節水を心がければエネルギーの節約になります。自分が生活の中で使う電力や水の量を意識して、節電や節水に取り組みましょう。

参考:エネルギー白書|資源エネルギー庁

本格的に取り組みたいなら

「もっと地球環境のために何かしたい!」と思ったら、本格的な行動を起こしてみましょう。一歩踏み込んだ取り組みがしたい人向けに、代表的な対策を二つ紹介します。

再生可能エネルギーを選ぶ

電力は毎日使うものです。二酸化炭素の排出量削減に貢献したいなら、太陽光や風力など自然の力を利用した『再生可能エネルギー』への切り替えを検討してみましょう。

エネルギー庁の統計によれば、日本でも徐々に再生可能エネルギーの割合が増えていっています。電気代の一部を次の再生可能エネルギー発電所の建設費用に充てられる電力会社もあり、再生可能エネルギーの利用は身近なものになってきています。

自宅に太陽光発電システムを設置して、自分たちが使う電気をまかなうのもよいでしょう。送電のためのエネルギー節約にもなる上、余った電力は電力会社に買い取ってもらうことも可能です。

地域のボランティア活動に参加する

自治体やボランティア団体が行う環境保全活動にも、進んで参加してみましょう。近所の清掃活動やごみ拾いをすることで、環境への関心や意識が高まり自分の住む地域への愛着もわいてくるはずです。

何かしたいと思っていても、どうすればよいのか分からないという人もいます。広く周知するために、環境保全に関するイベントに協力したり、SNSで情報発信したりするのもよいでしょう。

直接ボランティア活動やイベントに参加するのが難しい場合は、自治体や活動団体に寄付・寄金をするのがおすすめです。

まとめ

どんな対策をしても、一度破壊されてしまった自然が元に戻るには時間が必要です。完全には回復できない環境破壊もあるかもしれません。しかし、これ以上の環境破壊を防ぐための行動はできます。

環境破壊の原因は産業革命の時代から、人間が発展させてきた文明にあります。現在も国際的な議論が続いていることからも分かるように、環境破壊は人間が解決していかなければならない問題です。

個人が『自分事』として意識を持ち、小さなことから始めるのが環境破壊を食い止める第一歩です。普段の生活でできる取り組みから、環境問題に取り組んでみましょう。