ウクライナ情勢や急速な円安を受け、国民年金の支給額は4月分から6万4816円に引き下げられました。

少子高齢化が進むことによって、今後支給額が減っていくことは避けられないでしょう。

そんな中、2022年現在でも「年金だけでは食べていけない」という高齢者が多発しています。

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この記事では、年金だけでは生活ができない高齢者が多発している理由と、働かざるを得ない高齢者の実例を紹介します。

この記事は、今後連載予定である「年金シリーズ」記事の1本目となるので、まずは日本の年金の現在をこの記事で理解しましょう。

年金は大きく分けると2種類

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日本の年金は、社会保障の観点から国が行う「公的年金」と、公的年金の上乗せの給付を保障する「私的年金」の2種類があります。

その中でもさらに種類が分かれており、全部で14種類もの年金があります。

広く一般的なものは「国民年金」と「厚生年金」なので、以下ではその2種類のみ紹介します。

「国民年金」は日本国民全員が加入

国民年金は、20歳〜60歳までの日本国民全員が加入する公的年金制度です。

「基礎年金」とも呼ばれ、日本では最もポピュラーな年金です。

保険料は定額で、2022年現在では月に16,590円を収める必要があります。

保険料を納付し所定の要件を満たすことで

  • 老齢基礎年金
  • 障害基礎年金
  • 遺族基礎年金

などの年金が受給できます。

会社員や公務員が加入する「厚生年金」

厚生年金は会社員や公務員の方が加入し、国民年金に上乗せして支給される公的年金制度です。

保険料は所得に応じて変動するため、人によって納める金額が異なります。

保険料の半分は会社が支払い、残りの半分を従業員が支払う仕組みになっています。

厚生年金の加入期間があり、かつ所定の要件を満たしていることで、国民年金を受給する際に厚生年金が上乗せされます。

国民年金のみで生活するのは困難

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紹介したように、会社勤めをしていた日本の高齢者は、国民年金に厚生年金を上乗せした額が毎月給付されています。

ですが、個人事業主など会社勤めをしていなかった高齢者は厚生年金を受け取ることができず、国民年金しか貰えないことになります。

このことが「年金だけでは食べていけない」という高齢者が生まれる大きな要因となっています。

厚生年金の有無で老後の収入は月20万円変わる

2022年現在、平均的な収入があった夫婦2人の世帯(会社員の夫の収入が賞与分を含め月額換算で43万9000円、妻は専業主婦)の場合、貰える厚生年金は月21万9593円になります。

一方、2022年現在給付されている国民年金は月6万4816円です。

会社勤めをしていないと、老後に貰える年金の額は月20万円以上少なくなることになります。

厚生年金を貰っていたとしても、働いていた時の収入によって給付額は変わるので、年金による収入は人によって大きく異なります。

働かざるを得ない高齢者の実例モデルを紹介

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以下では、年金の受給額が少ないため働かざるを得ない高齢者の実例を紹介します。

ケース別に紹介するので、自分の現在の状況と照らし合わせながら見てみて下さい。

自営業から清掃業へ、月10万円弱の年金生活

東京都在住のK氏は72歳で、賃貸住宅で一人暮らしをしています。

元々は建築の設計を仕事としていましたが、現在は人材派遣で公園の清掃を行っています。

仕事による収入は月に2~3万円ほどで、自営業だったこともあり、月々に給付される年金は月10万円弱ほど。仕事と年金を合わせた収入は月に12万円程度になります。

東京都の賃貸住宅は安くても5万円は下らないと想定すると、月々の収入の半分ほどが家賃に消えることになります。

食費なども考えると生活はギリギリで、年金だけでは到底生活できないことが伺えます。

70歳で清掃、エアコン無しの一人暮らし

東京都のM氏は70歳で、厚生年金を月8万円、企業年金を年に2回6万円ずつ貰っています。

これだけでは生活できないというのが容易に想像できます。

清掃の仕事を行っており月収は10万円ほどと推測できるため、月々の収入は18万円ほどと考えられます。

現在は家賃2万円の公営住宅に住んでいますが、公営住宅への引っ越しが決まるまではギリギリの生活だったようです。

民間の家賃は5万円以上は下らないため、働いても働いてもお金が残らなかったそうです。

エアコンまで我慢して生活するほど、老後の年金問題は深刻なようです。

人生100年時代、今後の年金はどうなるか

年金の支給額の少なさから、働かざるを得ない状況になっている高齢者のモデルを紹介しました。

2022年現在でも年金の支給額が減少していますが、今後さらに減少していくことは避けられないようです。

年金制度に詳しい慶應義塾大学の駒村康平教授は「支給額の目減りは避けられない。『保険料も上げません』『支給開始年齢も変えません』となれば、普通に考えれば、1年あたりの給付を下げないとつじつまが合うはずがない。今もらっている方も、これからもらう方も、全員給付水準が下がっていく。」と述べています。

今でこそ苦しんでいる高齢者が多い中、現在の若者の将来はどうなっていくのでしょうか。

「年金シリーズ」の記事は今後も連載予定なので、年金の今後を考えたい方は次回以降の掲載を待ちましょう。