SDGs目標2【飢餓をゼロに】は何を意味するのか

「飢餓」という言葉は日本ではなじみがないかもしれません。しかし世界では飢餓に苦しむ人々が8億人はいると言われています。この記事ではSDGs目標2【飢餓をゼロに】を解説していきます。

SDGs目標2【飢餓をゼロに】について解説

国連が定めた「持続可能な開発目標」のことをSDGsと言います。SDGsの目標は全部で17あり、2番目が【飢餓をゼロに】です。飢餓というのは充分な食料が得られず、栄養不足になり健康を保てなくなった状態で、死に至ることさえあります。充分な食料が得られないことで、未来を奪われてしまう人たちが存在します。

SDGs目標2では、「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を推進する」ことがテーマです。全ての人に栄養のある食料を行き渡らせるとともに、食糧確保のために環境破壊を行わない持続可能な農業の在り方を目指さなくてはなりません。SDGs目標2はそのための目標を定めたものです。

【飢餓をゼロに】の8つのターゲット

目標2には8つのターゲットが存在します。ターゲットとは目標を達成するために具体的なテーマや解決策を挙げたものです。

2.12030年までに飢餓を撲滅し、全ての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。
2.25歳未満の子どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。
2.32030年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。
2.42030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。
2.52020年までに、国、地域及び国際レベルで適正に管理及び多様化された種子・植物バンクなども通じて、種子、栽培植物、飼育・家畜化された動物及びこれらの近縁野生種の遺伝的多様性を維持し、国際的合意に基き、遺伝資源及びこれに関連する伝統的な知識へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を促進する。
2.a途上国、特に後発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る。
2.bドーハ開発ラウンドのマンデートに従い、全ての農産物輸出補助金及び同等の効果を持つ全ての輸出措置の同時撤廃などを通じて、世界の市場における貿易制限や歪みを是正及び防止する。
2.c食料価格の極端な変動に歯止めをかけるため、食料市場及びデリバティブ市場の適正な機能を確保するための措置を講じ、食料備蓄などの市場情報への適時のアクセスを容易にする。

どうして飢える人が存在するのか

なぜ大勢の飢える人々が世界には存在するのでしょうか。それを理解するためには、以下の2点がヒントになります。

  • 飢餓はなぜ発生するのか?
  • 食品ロスとはなに?

飢餓はなぜ発生するのか?

出典:photo-ac.com

飢餓が発生するのにはさまざまな原因がありますが、近年の大きな原因の一つは気候変動による異常気象です。大型台風、豪雨、干ばつなどが頻発し、作物の収穫に多大な影響を与えています。

また飢餓が起きている国は多くが開発途上国であり、紛争地域でもあるため食料を確保することが困難な状況です。農業技術発展の遅れや、交通網の未整備の問題も小さくありません。これらの複合的な問題が、飢餓状態を発生させる原因となっています。

食品ロスとはなに?

出典:photo-ac.com

飢餓状態の人が開発途上国に多く存在する一方で、先進国では大量の食料が廃棄されています。世界では年間約13億トンもの食料が廃棄され、日本では年間1624万トン、そのうち食品ロスは約522万トンにもなります。(※2020年度推計)食品ロスとは、まだ食べられるものを廃棄することです。

出典:農林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」

このように廃棄されるほど食料があるのに、飢餓が存在するのはおかしなことです。飢餓の真の問題点は、食料が足りないことではなく、必要とする人たちの手に渡っていないことと言えるでしょう。

世界と日本の取り組み

飢餓問題に対しての世界や日本の取り組み事例をいくつかご紹介します。日本ではグローバル企業が、国内外でさまざまな取り組みを開始しています。

世界の取り組み事例

  • 国連世界食糧計画(WFP)

WFPは、36の加盟国から成り立っている世界でも最大の人道支援機関です。紛争や災害等の被害にあった人々に対して食料支援することで、復興への道を切り開きます。女性や子供への栄養強化や小規模農家への技術向上支援に大きく取り組んでいます。

  • フランスの「食品廃棄禁止法」

環境問題にいち早く取り組んでいるヨーロッパでは、食品廃棄への意識が高く対策も迅速です。フランスは2016年に世界で初めて「食品廃棄法」を制定しました。スーパーで売れ残った食品の廃棄を禁じる法律で、売れ残った食品は再活用することが義務付けられています。

日本の取り組み事例

  • TABLE FOR TWO

世界の9人に1人は飢餓状態であるにも関わらず4人に1人は肥満と言われています。TABLE FOR TWOは、食の不均衡を是正するために先進国で1食とるごとに、 開発途上国に1食をプレゼントするというプログラムを実行しています。

  • 味の素株式会社

出典:ajinomoto.co.jp

味の素グループは、「美味しく食べて健康づくり」という理念を掲げて、社会課題の解決に取り組んでいます。「ベトナムにおける栄養改善への取組」ではASVアワード大賞を受賞しており、栄養教育が発展していなかったベトナムで小学校給食の品質の改善や食育活動を積極的に行っています。

【飢餓をゼロに】するために必要なこと

世界の飢餓に苦しんでいる人たちに対して自分は何ができるのか。未来的に食料を調達するために、環境破壊を行わない農業方法とはどのようなものなのかを考えてみましょう。

持続可能な農業に向かって

出典:photo-ac.com

農地を開拓するために多くの森林を伐採し、環境破壊に繋がるような農業は持続可能な農業ではありません。ITなどの先進技術を活用し、環境と調和した食料生産や食料調達を目指していくのが持続可能な農業です。持続可能な農業の開発が、飢餓を解決するための重要な手だてとなることは間違いありません。

「分け合う」という考え方

出典:photo-ac.com

食べられない人に食物を「分けあう」という考え方はとても大切です。 「分け合う」というのは大げさなことではありません。ほんの些細な行動からはじめられることです。

  • 無駄な食料を買わない
  • 食べ過ぎない
  • 自国の農業を支援する(地元の農産物を買う)

以上のことに取り組むだけでも、飢餓にまつわる問題を大きく変えることが可能です。食べ物に感謝し、食べられない人のことをほんの少し気に掛ける。そんな思いを大切にしてください。