2023年10月7日に勃発したパレスチナ・イスラエル戦争。この事態に関して、日本寄付財団の村主悠真代表が、ガザ地区で子どもの教育支援などを行う認定NPO法人パレスチナ子どものキャンペーンの手島正之氏にインタビューを行いました。

パレスチナ難民が生まれた背景

村主:手島さんが所属されている”パレスチナ子どものキャンペーン”とは、どのような活動をしている団体なのでしょうか?

手島:パレスチナとその周辺地域の困難な状況にあるパレスチナ難民やパレスチナ人に人道的な支援を行い、 子ども、女性、障がい者の人権を擁護し、生活の向上に貢献するために活動しています。その他中東地域や日本国内でも、災害などの緊急事態に直面した子どもや家族への支援を行うとともに、パレスチナへの理解を促進し、平和な国際社会の実現を目指す団体です。

村主:具体的にはどんな支援をされていますか?

手島:主な活動内容としては、子どもの教育支援や、戦争に巻き込まれて怪我をした子どものリハビリ支援、心理的な負担を抱えた人々の心理社会的支援、緊急の食料・生活物資支援など、医療や基本的なサービスへのアクセスが困難な方々の支援をしています。

村主:手島さんは、これまでさまざまな国で活動されてきたと思いますが、どのような思いで活動されているのでしょうか?

手島:学生の時に国際関係や政治などを勉強しているうちに、難民問題や民族間紛争に漠然と興味を持つようになり、将来自分もそのような活動をしてみたいと思ったのがきっかけです。そしてパレスチナ支援に関わるようになってからは、これは続けていかなければいけないとの思いが強くなりました。

村主:パレスチナ・イスラエル問題は、日本人からすると、遠い世界のものでよく分からない人が多いと思います。まずはパレスチナについて教えていただけますか?

手島:現在のパレスチナ自治区は、ヨルダン川に接している「ヨルダン川西岸地区」と地中海、エジプトに接している「ガザ地区」に分かれています。 ヨルダン川西岸とガザは1994年以来「パレスチナ自治区」とされ、「パレスチナ自治政府」が存在していますが、 独立国家ではありません。56年間以上イスラエルの占領下に置かれており、パレスチナ自治区の人々は移動の自由、教育、医療など基本的なサービスを受ける権利が極端に制限され続けています。

村主:そもそもパレスチナ難民が生まれたのは、イスラエルが建国されたことがきっかけですよね。

手島:そうです。1948年にイスラエルが建国され、1948年~1949年の第一次中東戦争が勃発したことで、パレスチナ人は居住地を追われ、 ヨルダン川西岸地区やガザ地区、そしてヨルダン、シリア、レバノンなど近隣諸国に逃れました。 難民となったパレスチナ人は、難民キャンプの粗末なテントや洞窟などで、困窮を極めた生活を強いられるようになりました。当時はいずれは戻れるだろうと思っていたのが、75年間未だに戻れない状況が続き、今に至っています。

 

パレスチナ・イスラエル戦争の現地の声

村主:今回のガザ・イスラエル戦争について、どのように捉えていらっしゃいますか?

手島:こんなことになるとは、本当に予測ができませんでした。しかし、1993年にオスロ合意が結ばれ、パレスチナ自治区が作られましたが、ユダヤ人入植地が増殖してパレスチナ自治区はどんどん狭まり、多くの人々が家や土地を奪われ続けています。イスラエル軍の占領下で、自分たちの権利が制限される状況が長く続き、パレスチナ人の不満がたまっていった一方で、国際社会がそうした問題に対してうまく向き合ってこれず、なかなか状況が変わらなかったということが、今回の戦争の背景にあると思います。

村主:今、現地はどのような状況なのでしょうか?

手島:ガザに関しては、本当にあり得ない状況です。人間がここまで苦しい、非人道的な状況に追い込まれていいものなのかと思います。あまりにも多くの民間人が犠牲になっています。また爆撃により家が破壊され、避難しようにも国連の避難場所は過密で入れません。避難場所さえ確保できず、路上で過ごさなければいけない人であふれかえっており、今雨季になったガザでは、雨ざらしのまま過ごさなければいけない人々が多いです。また、もともとガザはインフラが整っていないので雨が降ると下水の処理が追いつかず、すぐに洪水になり、衛生面の問題も深刻です。

村主:パレスチナに支援に行った知り合いの医師の中にも亡くなった方がいます。手島さんの元にはどのようなSOSが届いていますか?

手島:やはり食料や水の不足が深刻です。ライフラインの確保が極めて難しい状態です。食料や水は爆撃が続く中、長い距離を歩きながらやっとの思いで確保しなければなりません。その食料や水が確保できる場所も日に日に少なくなっています。なかには全く物資を確保できない人たちが多くいます。こういった状況を改善するためには、早く戦闘が終わること、これに尽きると思います。

村主:支援物資を送るための独自のルートのようなものはあるのでしょうか?

手島:ガザ地区内の当会の提携団体を通じて当面はガザ内に残るわずかな物資を配布したり、現金支給を行っています。また現在エジプト側で支援物資を調達し、ガザ南部の検問所を通じて届けようとしていますが、まだ戦闘が止んでいないので難航しています。いずれは日本から物資を送れるように体制を整えたいと考えています。

村主:今この記事を読んでくださっている方が何か支援をするとなると、やはり寄付という形になるのでしょうか?

手島:そうですね。今は寄付していただくのが一番ありがたいです。こうした極限の状態でも、ガザ内部で活動している現地の提携団体が支援できます。ガザ内ではわずかに残っている物資の値段が急騰しており、お金がないと支援物資の確保ができないため、寄付をしていただけるととても助かります。

村主:寄付をしていただいた方には何かレポートが届くのでしょうか?

手島:現在支援を受けた方々個人のコメントを取るのはかなり難しいですが、物資配布の現場の写真や現地の人の様子などといったフィードバックをお届けしています。

https://ccp-ngo.jp/get-involved/

今後の展望について

村主:たくさんの国に携わっていらっしゃると思いますが、今一番力を入れたいのは、パレスチナ問題でしょうか?

手島:そうですね。今まさに危機的な状態にあるのはガザ地区だと思うので、そちらに注力していきたいです。また、レバノンにいる難民への越冬支援など、他の地域で行っている活動のニーズも高いので、引き続き支援をしていきたいと思っています。

村主:今後は団体としてどのような動きをしていく予定ですか?

手島:現在国連機関などがガザでの緊急支援をより大きく展開しようとしていますが、戦闘が終わらないので厳しい状態が続いています。その一方で、当会では、引き続き先ほど申し上げたガザ内での物資配布や現金支給を実施して、エジプト側から物資の搬入が早く実現できるように動いていきたいと考えています。

村主:その動きを強化するために、今やれることは何でしょうか?

手島:当会はイスラエル、パレスチナ自治区でNGO登録をしていますが、エジプト国内はまだできていません。従ってエジプトでも同様に登録する準備をしています。NGO登録をしなければ、海外からエジプトに支援物資を送ることはできない状態です。また現地で物事をうまく進めていくためには、ネットワークの強化も必要です。現地の団体や影響力のある個人との繋がりを作っていきたいと思います。

村主:本日はありがとうございました。一刻も早い収束を願うばかりです。

手島:こちらこそありがとうございました。そのためにも活動を広げていきたいと思います。