日本寄付財団は、タイのスラム街で孤児院を運営するドゥアン・プラティープ財団(Duang Prateep Foundation)に対して今回、教育支援としての寄付を行いました。それを記念して村主代表が、ドゥアン・プラティープ財団から招待され、タイのバンコクに直接訪問し、子どもたちから歓迎を受けました。

それと同時に、事務局長のプラティープ・ウンソンタム・秦さんや、タイの元首相であるアピシット・ウェーチャチーワさんとの特別記念会談が実現しました。

ドゥアン・プラティープ財団とは

ドゥアン・プラティープ財団はタイ・バンコクのクロントイというスラム街で孤児院を運営していて、様々な年代の子どもたちが在籍しています。また、親がいない子どもたちだけではなく、貧しくて学校へ通えない子どもたちもこちらで学んでいます。ドゥアン・プラティープ財団は、主に教育推進事業、スラム地域開発事業、人材育成事業、緊急支援事業の4つの事業を行っています。

前列右から、プラティープさん、アピシットさん、村主代表

プラティープさんについて

スラムの天使と呼ばれ、タイではとても有名なプラティープさんは、クロントイのスラムに生まれました。幼い頃から路上で物売りをしていましたが、『教育こそが生活を大きく変える原動力になる』と確信し、お姉さんと共に「一日一バーツ学校」を開き、スラムの子供たちと家族の支援を行いました。このような活動が認められて、ラモン・マグサイサイ賞を受賞し、このときの報奨金を投じて1978年8月31日、ドゥアン・プラティープ財団を設立しました。 また、2000年から2006年まではタイ上院議員を務め、国会を通して教育や福祉などの貧困問題、また麻薬問題などに取り組まれたそうです。

参考:

http://www.dpf.or.th/jp/autopagev4/show_article.php?auto_id=4

村主代表の訪問をとても喜んでいたプラティープさんは、村主代表に対して、「わたしたちはバンコクのこのスラムのエリアで長年孤児院をやってきました。そしてあなたは世界中でこのような支援活動を長年続けられていて、どれほどの子供たちやその施設関係者が感謝しているか想像もできません。

これはとても価値のあることだと思います。世界中の子どもたちを助けることは、これから生まれてくる未来の子どもたちをも助けていることになります。これからもこの活動を続けて頂けたら嬉しいです。」と激励されたそうです。

アピシット・ウェーチャチーワ元タイ首相について

2008年、当時タイ史上最年少の44歳という若さで首相に就任したアピシットさん。今もなお国民の人気は高く支持されています。2009年には、当時の麻生首相と日本で首脳会談を行いました。スラム地区でボランティア活動に取り組むなど、青年時代から社会課題に対する意識が高かったアピシットさん。現在は、積極的にプラティープ財団を支援されているそうです。

アピシットさんからは、「タイは発展していますが、それはほんの一部にすぎず、少し離れるとスラム街がまだまだたくさんあります。平均的な底上げをして、タイをもっと良くしていきたいと思っているので、今回のご支援は本当に感謝しています。」とのお言葉がありました。

タイのスラム問題について

タイにはスラム街が2,000以上存在していて、クロントイスラムは、約8万人が住むバンコク最大のスラムです。タイで本格的なスラムが形成されるようになったのは、1960年代の工業化政策が本格化した頃と言われており、地方から都市へと仕事を求めて人々が流れ込んだことがきっかけです。

地方の人々は地価の高い都市に土地を持つことができず、空き地に住むようになりました。教育レベルの低い農民たちは低賃金の単純労働に就くことしかできませんでしたが、それでも農業をするよりも収入が良かったため、都市部への人口流入は止まらず、次々と空き地に住む人が増えスラムが形成されました。

ドゥアン・プラティープ財団をはじめ、国内外のNGOの活動により、地域の発展、教育レベルの向上、麻薬・HIV/AIDS感染の予防など様々な 取り組みが行われていますが、現在でも下水や立ち退き問題などスラムが抱える問題は山積みだそうです。  

参考:

http://www.dpf.or.th/jp/autopagev4/show_article.php?auto_id=3

 日本寄付財団の思いとは

タイでの孤児院訪問について、村主代表のコメントです。

「コロナ禍で寄付が減り大変だとお聞きし、支援させていただきました。この孤児院は、行き場のない子供たちの居場所になっていて、我々が想像もできない価値があると思います。しかし、ここで学んだ子どもたちも、一旦社会に出ると、最低賃金で働かざるをえないという厳しい現実がまだまだあり、貧困の連鎖から脱却できない子供たちが多いのが現実です。今回、バンコクで精力的な活動をされているプラティープさんに、寄付という形で関わることができ、そして実際にお会いすることができ、とても光栄に思っています。」

スラムは日本ではあまり馴染みがなく、実際に目にしたことがある人は少ないのではないでしょうか。それだけ日本は恵まれている国だと思います。日本寄付財団の活動を通じて、世界に存在する多くの社会課題を一つでも知っていただけると幸いです。