SDGs(持続可能な開発目標)では、貧困、飢餓をなくすための目標が多くあります。しかし、目標達成に取り組む多くの国でも、フードロス(食品ロス)が起きているのが現実です。フードロスをなくすために、私たちにできることはどんなことでしょうか?

フードロスは世界中で解決すべき重要課題

フードロスとは、食べ残しや食べ忘れ、流通や加工の過程における可食部の廃棄などによって、まだ食べられる食料が捨てられてしまうことです。世界中で問題視されており、フードロスを減らすためにさまざまな取り組みが進められています。

SDGs目標12「つくる責任、つかう責任」との関係

2020年の時点で、最大約8億1100万人が飢餓に苦しんでいたと推定される一方、先進国では大量のフードロスが発生しています。

SDGs12では「つくる責任、つかう責任」として「持続可能な生産消費形態を確保する」目標が掲げられており、持続可能な『生産』と『消費』両面での実現を目指しています。

フードロスは単に食料が無駄になるだけではありません。生産や加工にかかる資源やエネルギー、流通に必要な燃料、生産と廃棄による環境への負担などにも関わりがあり、他のSDGs目標にもつながっています。

参考:国連報告書: パンデミックの年に世界の飢餓が急増|国連WFP

参考:SDGsとは?|JAPAN SDGs Action Platform |外務省

参考:SDGs(持続可能な開発目標)17の目標と169のターゲット(外務省仮訳)|農林水産省

フードロスの現状を知ろう

「多すぎる」「賞味期限が近い」といった理由で、まだ食べられる食料を捨てたり残したりした経験は誰にでもあるでしょう。自分1人が残したところで、大した影響はないと思うかもしれません。

しかし「自分だけなら」という人が、日本中、世界中にいたらどうなるでしょうか?今、世界で発生しているフードロスの現実を見ていきましょう。

日本の食品廃棄量

日本でまだ食べられるのに捨てられる食料は、年間約612万トンに上ります。これは、東京ドーム約5杯分にあたる量です。計算上では、日本人1人につき、茶碗約1杯分の食料が毎日捨てられていることになります。

日本のフードロスには、小売店での売れ残りや商品にならない規格外品、飲食店での食べ残しといった事業系フードロスと、家庭での料理の作りすぎや食材の使い残しといった家庭系フードロスがあります。

食料の約62%を輸入に頼っているにもかかわらず、決して少なくない量を捨てているのが現状なのです。

参考:食品ロスの現状を知る|農林水産省

フードロスは世界中で起きている

世界全体で見れば、フードロスは年間約13億トン、日本では約612万トン(2017年度推計値)とされています。

地域別に見ると、ヨーロッパや北アメリカのフードロスの量は、1人あたり年間280~300kg、サハラ以南のアフリカや、南・東アジア諸国(年間120~170kg)の約2倍です。

特徴として、ヨーロッパや北アメリカなどの先進国では消費の段階でのフードロスが多いことが挙げられます。一方、アフリカや南・東アジアなど途上国の場合は、流通が不安定だったり、適切な保存ができなかったりするために、消費者に届く前に腐ったり傷んだりしてしまうことが多いのです。

参考:食品ロスの現状を知る|農林水産省

参考:世界の食料ロスと食料廃棄|国際連合食糧農業機関(FAO)

地球温暖化にもつながる

フードロスは地球温暖化にも影響を与えます。まず挙げられるのが、廃棄された食料を処理する過程で生じる二酸化炭素の問題です。

また、生産から加工、流通など消費者に届けられるまでにもエネルギーが消費され、結果として温室効果ガスが排出されます。例えば、穀物を作るときの農耕機械の排気ガス(二酸化炭素)や水田から生じるメタンなどです。畜産でも、牛のゲップによるメタンの増加が問題になっています。家畜を増やせば、それだけメタンの排出量も増えるでしょう。

生産量を調整することで、こうしたエネルギーの消費を抑えられます。適正な量が、必要とされるところにきちんと届けば、フードロスも発生しづらくなり、ひいては地球温暖化の抑制にもつながるでしょう。

参考:世界の農林水産|国連食糧農業機関(FAO)

日本でフードロスが起きる原因

日本のフードロスにはさまざまな原因があります。生産量と消費量のバランスや、食べ残しの問題に加えて、日本独自の流通ルールも、フードロス増加につながっている可能性があることを認識しておきましょう。

食べ残しや使い残し

家庭や飲食店で生じるフードロスとして最も多いのが食べ残しや食材の使い残しです。皮の剥きすぎなどで可食部分を必要以上に捨ててしまう「直接廃棄」や、食べる前に賞味期限が切れてしまい、廃棄せざるを得ない「過剰廃棄」にも注意が必要でしょう。

コンビニや小売店でも、消費者のニーズに応えて多くの商品をそろえているために期限内に売り切れず、過剰廃棄が起こりやすくなっています。

いずれのケースでも「買いすぎ」「作りすぎ」「仕入れすぎ」など、購入や注文の量が消費量を上回ってしまうことなどが原因となっています。

日本独自の1/3ルール

フードロスを増やすとして問題視されているのが1/3ルールです。日本独自の商習慣で、法律ではありませんが、製造元と卸業者、小売店の間で定められています。

まず、卸業者は製造元から商品を仕入れたら、賞味期限の1/3を迎えるまでに小売店に納品しなければなりません。

つまり、賞味期限が製造から6カ月とすると、卸業者は製造から2カ月以内に小売店に納品できなかったものはメーカーに返されてしまうのです。

製造元は返された製品を、ディスカウントストアなどに値引き販売するか、賞味期限が残っていても廃棄することになります。

また、小売店は賞味期限まで1/3を切ったものは販売できないという暗黙のルールもあります。全体でみると、販売できるのは製造から賞味期限までの期間の1/3にすぎません。

需要と供給のアンバランス

生産量に対して需要が少ないと、廃棄される量が増えます。しかし、農畜産物は生産量を大きくコントロールできません。需要に変化があっても対応が難しいため、過剰になりやすいのです。

また、野菜や果物などは見た目のよいものが好まれる傾向があります。規格外のものやキズがついたものはその場で廃棄されたり、販売ルートに乗っても売れ残ったりしやすいため、フードロスにつながるのです。

近年では、規格外の野菜や果物を安く販売する直売所なども増えてきています。フードロスを減らすための生産者側の取り組みといえるでしょう。

フードロスをなくすためにできること

消費者である私たちが、フードロスをなくすためには何をすればよいのでしょうか?特別なことは必要ありません。普段の生活の中で、少し気を付けるだけで、フードロスは十分減らせるのです。

食事は食べきれる量だけにする

フードロスを減らすために私たちが意識すべきことは、自宅では「作りすぎない」、外食では「頼みすぎない」ことです。

買い物に行く前にあらかじめ献立を決めたり、冷蔵庫の中をチェックしたりして、必要なもの以外は買わないようにしましょう。買ってきたものは適切に保存して、使い切る工夫も必要です。

外食のときは、食べきれる量だけを注文します。お腹が空いていると、ついあれもこれもとなりがちですが、まず一品注文して、食べ切っても足りなければ追加で頼みましょう。また、可能であれば量を調節してもらったり、持ち帰ったりするのもおすすめです。

賞味期限と消費期限の違いを知る

賞味期限は保存期間が比較的長く、開封前の状態でおいしく食べられる期限です。スナック菓子やカップ麺、冷凍食品などに多く見られます。

賞味期限を越えてしまったからといって、すぐに食べられなくなるわけではありません。消費期限と混同して、捨ててしまわないようにしましょう。

一方、消費期限は安全に食べられる年月日を指し、この期限を越えてしまったら食べない方がよいとされています。消費期限が近い食品を購入した場合は、すぐに食べ切ってしまいましょう。

参考:消費期限と賞味期限|農林水産省

フードバンクに寄付する

フードバンクは、包装の破損や印刷ミス、過剰生産などによって流通ルートから外された食料をメーカーなどから寄付してもらい、必要としている施設や家庭に届ける仕組みです。

団体によっては、缶詰や乾物など、賞味期限が十分あるものなら個人からの寄付を受け付けている場合もあります。

食料そのものは寄付できなくても、フードバンクの活動資金として、寄金するのもおすすめです。実際に活動しているフードバンクに問い合わせてみるとよいでしょう。

まとめ

食料は、人間が生きていく上で必要な資源の1つです。資源としてはもちろんですが、自分の口に入るまでに、生産者や物流業者、小売業者など多くの人の手を介していることを考えれば、食料の大切さが分かるのではないでしょうか。

しかし、現実には多くの食料がごみとして捨てられています。世界には満足に食べられない人もたくさんいることを忘れずに、フードロスをなくしていきましょう。