ジェンダー平等は、SDGs(持続可能な開発目標)の目標に挙げられていることからも分かるように、世界中で取り組まなくてはならない問題の1つです。そもそもジェンダーとは何を指すのでしょうか?ジェンダーの意味や具体例を見ていきましょう。

ジェンダーという概念を知ろう

ジェンダーとは「社会的な性差」のことを表し、いわゆる「性別」とは意味が異なります。ジェンダーの問題について考える前に、概念を知っておきましょう。

ジェンダーとは社会的、文化的性差

人間を含め、ほとんどの生物にあるのが「オス・メス」という生物学的性差(セックス)です。それぞれの外見や生殖器、性染色体にも違いがあります。

一方、社会的・文化的性差と呼ばれているのがジェンダーです。社会や時代背景によって「作られた」性差と定義されています。

ジェンダーの概念そのものに良い悪いがあるわけではありません。しかし、社会や文化において、本人の意思に関係なく、男女それぞれにふさわしいとされる振る舞いや役割などが期待されることで、不平等が生まれています。

決められた「男らしさ」「女らしさ」

ジェンダーを説明するなら「男らしさ」「女らしさ」という言葉が分かりやすいでしょう。例えば、子どものランドセルの色や制服も、「男の子だからランドセルは黒」「女の子の制服はスカートが当然」など、本人の意思とは関係ない判断基準が存在しています。

男性なら親や周囲の大人に「男は仕事第一」「男が台所に立つものではない」、女性は女性で「結婚して子どもを産むのが当たり前」「家事をするのが当たり前」などと言われたことがあるかもしれません。

ジェンダーとは、本人の意思と必ずしも一致しない、その社会で望ましいとされる男性像・女性像、「男だから・女だからこうあるべき」姿ともいえるのです。

ジェンダー問題とは

「男だから」「女だから」という概念自体は日本に限らず、世界中に古くから存在します。21世紀の現在でもなくなったとはいえません。さまざまな分野に存在するジェンダー問題の中から、主なものを見ていきましょう。

男女の不平等

男女雇用機会均等法においては、働く上で性別による差別があってはならないとされています。しかし実生活においては、性別で生き方や働き方が決められてしまうシーンがあるのです。

例えば、昇進の機会や賃金といった点で、同じ仕事をしていても女性のほうが不利になったり、結婚や妊娠、出産などのライフイベントを機に、暗に退職を促されたりすることもあるでしょう。

一方男性も、一家の主として家族を養わなくてはならない、家庭より仕事という刷り込みや思い込みのために、長時間労働や休日出勤を余儀なくされたり、家族と過ごす時間を犠牲にしたりなど、生活の質が低下しがちといえるでしょう。

参考:雇用における男女の均等な機会と待遇の確保のために |厚生労働省

根強い役割分担意識

日本だけでなく、世界の多くの国々で「家事や育児は女性がするもの」「男性は仕事をして家族を養う」などという役割分担意識は根強く残っています。

2021年度の男女共同参画局の調査では、男性では50.3%。女性では47.1%の人が「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」と思っているという結果が報告されました。

また、「家事・育児は女性がするべきだ」という項目に対し「そう思う」と回答した男性は29.5%、「デートや食事のお金は男性が負担すべきだ」という項目に対し「そう思う」と回答した女性は22.1%となっています。

参考:令和3年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究|内閣府男女共同参画局

日本のジェンダーギャップ指数は先進国最下位

ジェンダーギャップ指数は「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野のデータから算出した、対象国の男女格差を表す指数です。0を完全不平等としており、1に近付くほど平等とされています。

日本のジェンダーギャップ指数は、2021年の調査で156カ国中120位(0.656)となりました。先進国で最下位であるだけでなく、アジアの中で見ても、中国や韓国、ASEAN諸国(東南アジア諸国連合:タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナムなど10カ国)より低いという結果になっています。

特に不平等と評価されたのが「政治」です。ジェンダーギャップ指数は0.061(147位)と極端に低く、2006年の初回発表時からほとんど変化していません。

参考:世界経済フォーラムが「ジェンダー・ギャップ指数2021」を公表|内閣府男女共同参画局

参考:グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2021 |世界経済フォーラム

世界のジェンダー問題事例

ジェンダー問題は、日本だけでなく世界で起こっています。世界規模のジェンダー問題にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。

教育格差

日本でも、1965年の女性の大学進学率はわずか4.6%と、男性の約5分の1にすぎませんでした。

しかし、2019年では50.7%まで上昇し、男性の56.6%という数字に近づいています。ジェンダーギャップ指数も「教育」では0.983というスコアを獲得しているのです。

一方、世界(特に途上国)では「女性に教育は必要ない」という考え方が根強く残っている地域もあります。家事や子守りをさせる、早いうちに結婚させるなどが理由です。そもそも学校に女子トイレなどの女性用の設備がないところも少なくありません。

参考:学校種類別進学率の推移|内閣府男女共同参画局

途上国の早すぎる結婚や妊娠

ユニセフでは、18歳未満での結婚を児童婚と定義し、禁止を目指しています。男女ともに適用されますが、女性の方が圧倒的に多いのが現状です。

2019年の報告では、世界に生存している推定6億5000万人の女性が18歳未満で結婚して(させられて)おり、年間約1200万人が「子どもの花嫁」になっているのです。その多くは貧困が原因とされています。

途上国では本人の意志とは関係なく、早すぎる結婚・妊娠によって教育の機会が奪われてしまうという現実があるのです。

参考:児童婚 子どもの花嫁、年間約1,200万人 世界の女性の5人に1人が児童婚を経験 ユニセフ、教育への投資、地域社会の意識改革訴える|ユニセフ

雇用機会や待遇面

働く女性や「働きたい」と思っている女性にとって、雇用機会や待遇面での男性との差は受け入れ難いものといえるでしょう。

例えば、2019年のJILTP(労働政策研究・研修機構)の報告によれば、男女の就業率は2018年時点で、アメリカでは男性76.1%に対し女性65.5%、イタリアでは男性67.6%に対し女性49.5%など、世界の多くの国で10%前後の差が見られます。日本でも男性83.9%に対し、女性69.6%と大きな開きがあるのが現状です。

また、2019年時点のOECDの報告では、OECD諸国の平均として13.6%の男女間の賃金格差があるとされています。さらに日本は平均より高い24.5%という結果が出ているのです。

参考:データブック国際労働比較2019|独立行政法人労働政策研究・研修機構

参考:男女平等に向けた歩みは遅すぎるー国際女性デー|経済協力開発機構(OECD)

ジェンダーの平等を実現するために

ジェンダー平等への取り組みは、女性だけでなく男性にとっても重要です。では、ジェンダー問題を解決して、平等を実現するために、私たちは何をすればよいのでしょうか?

ジェンダー問題について考える

まず、ジェンダーという概念を知るところから始めましょう。ジェンダー問題に取り組むには「ジェンダーとは何か」を理解することが不可欠です。その上で、自分の中に「男だから」「女だから」という決め付けや思い込みがないか、振り返ってみましょう。

SDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」の内容をチェックしてみるのもおすすめです。SDGs5の目標やターゲットは主に女性が対象ですが、「女性だから」という不平等が解決されれば、男性の「男らしさ」も求められなくなるかもしれません。

ジェンダー平等とはどういうことなのか、どうすれば実現できるかを考えるきっかけにもなるはずです。

参考:JAPAN SDGs Action Platform | 外務省

支援団体に寄付をする

途上国の女性を支援している団体に寄付や寄金をするのもよいでしょう。教育や健康、貧困など、途上国の女性たちが直面しているさまざまな問題はジェンダー問題にもつながります。結果的にジェンダー平等に協力することになるのです。

寄付や寄金をする支援団体を選ぶときは、必ず活動内容を調べましょう。自分が共感できる活動を行っているところや、信頼できるところを選ぶのが基本です。1回払いの他、毎月決まった金額の寄金ができる場合もあります。ただし、自分が無理なくできる金額に留めるようにしましょう。

まとめ

ジェンダー概念は、多かれ少なかれ、世界中の国にあるものです。繰り返しになりますが、ジェンダー自体は良し悪しのあるものではありません。

「男性はこうあるべき」「女性だからこうしろ」など、ジェンダー概念を基に生き方を制限されたり、本来持っている権利や自由を奪われたりすることが問題なのです。

「2030年までに」ではなく、今からジェンダーの平等を目指して、行動を起こしてみましょう。