食料不足は年々広がっており、将来的にはさらに悪化すると予想されています。食料の多くを海外に依存している日本にとっても、避けては通れない問題です。食料不足の原因や現状を知り、自分たちが生活の中で何ができるのかを考えてみましょう。

食料不足は他人ごとではない

食料不足にあえぐ人々は、世界中で年々増えています。日本では想像しづらいかもしれませんが、実は人ごとではありません。世界の動きによっては、日本も食料不足に陥る可能性があるのです。

食料不足の現状を知ろう

2020年に国連が報告した内容によると、全世界で8億1100万人(約10人に1人)が慢性的な栄養不足(飢餓状態)にあるとされています。

食料不足にある人々の数は2010年代から上昇傾向にありましたが、さらに状況を悪化させたのが新型コロナウイルスの感染拡大です。

飢餓状態に陥っている国々の特徴として、『食べ物にいつでも誰でも、簡単にアクセスできる』食料安全保障が成り立っていない状況があります。支援団体からの物資が頼りという地域も少なくありません。

新型コロナウイルスの影響で物資の供給が滞り、さらに食料事情が悪化したと考えられます。

参考:国連報告書 パンデミックの年に世界の飢餓が急増|World Food Programme

日本も食料不足に陥る可能性がある

食料不足は海外だけで起こっている問題と言い切れません。農林水産省の発表では、2020年度の日本の食料自給率は37%と、先進国の中では低い水準にあります。

天ぷらそば一杯を見てみても、そば粉やエビ・天ぷらに使用する菜種油など、材料のほとんどを海外からの輸入に頼っている状況です。自給率が80%と高い水準にある野菜類も、実は9割に海外産の種子が使われています。

もし、何らかの事情で食料の輸入がストップしてしまえば、日本でも食料不足が起こる可能性は高いでしょう。

参考:知ってる?日本の食料事情~日本の食料自給率・食料自給力と食料安全保障~|農林水産省

食料不足の主な原因

食料不足が特に深刻なのは、アフリカや南アジア・ラテンアメリカなどの発展途上国です。しかし、先進国にも食料不足は起こっています。食料不足が起こる原因は、国の発展度合いに関係なくあり得ることなのです。

自然災害による被害

小規模農家は自然災害による耐性がないため、被害が大きくなる傾向にあります。例えば、農業用水は水源のほとんどを雨水に頼っているので、干ばつには対応できません。農畜産物被害の8割が干ばつだとされています。

台風や洪水による被害も、食料不足が起こる原因の一つです。家が破壊されたり畑が流されたりすると生活の基盤が失われ、その日食べるものにも困るようになるでしょう。

また、先進国で自然災害が起きると発展途上国の食べ物が足りなくなるという、一見奇妙に思える現象も起こります。自国で食べ物を自給できなくなった先進国が、発展途上国から農畜産物を輸入してしのごうとするためです。

有事の際は結果的に、先進国が発展途上国の食料不足を悪化させているともいえます。

参考:世界の食糧安全保障と栄養の現状|公益社団法人 国際農林業協働協会(JAICAF )

国の情勢悪化による流通の停滞

食料不足に悩む地域の多くが紛争の最中にあるのは、決して偶然ではありません。

紛争が起きると、農作物が作れなくなったり家畜の世話ができなくなったりします。最悪の場合には、自分の所有する土地を捨てて逃げなくてはならない人も出てくるでしょう。農作物の世話をし収穫する人がいなくなれば、生産量は減少します。

また、紛争地以外の土地でできた農作物を輸送してもらおうにも、紛争によって交通が制限されれば、必要な人に届かなくなる可能性もあります。結果として量が制限された農作物は高くなり、貧しい人には買えなくなるのです。

需要と供給のバランスの悪さ

人口増加や人々の生活レベルの向上に伴って、食料の需要は質・量ともに増えています。また、再生可能エネルギーの世界的な推進によって、バイオ燃料に必要な農産物の需要も増えてきました。

一方、食料の供給は不安定です。単位面積(10ヘクタール)あたりの収穫量は増えてはいるものの、人口増加に対応できるほど増やすのには限界があるでしょう。

さらに異常気象による被害や、家畜伝染病の流行といった不測の事態にも供給量は左右されます。

国連は、2020年時点で78億人と推計されている地球の人口が、2050年には97億人に達すると予測しています。今後も必要な食料の量はさらに増えるはずです。需要に対して十分な供給を確保できなければ、食料不足が解消することはないでしょう。

参考:
(1)世界の食料等の需給動向 ア 食料需給に影響を与える構造的な要因と今後の見通し:農林水産省
2050年における世界の食料需給見通し|農林水産省

もう一つの食料問題「フードロス」

食料不足とともに問題視されているのが、フードロスです。命に関わるほどの飢餓状態にある人がいる一方で、食べられるものが大量に廃棄されています。『食の不公平』を引き起こすフードロスの状況も知っておきましょう。

1年で大量の食料が廃棄されている

生産された食料の1/3が、廃棄物として捨てられていることを知っていますか?しかも、捨てられるのは消費期限が切れたものや、傷んでしまった食べ物ばかりではありません。

『多すぎるから』『売れ残ったから』という理由で、食べられるものも安易に捨てられているのです。

1年間に廃棄される食料は全世界で13億tにも上り、そのうち日本で捨てられているのは約612万tです。国民1人あたりに換算すれば、1日に茶わん1杯分の食料を毎日捨てている計算になります。

参考:
飢餓と食品ロスに関する、5つの事実 |World Food Programme
食品ロスの現状を知る:農林水産省

輸入した食料を捨てているという事実

発展途上国でもフードロスは発生しています。とはいえ理由は保存できる環境やインフラが整っていない・農作物の収穫ができないなど、先進国とは異なるものです。

では、保存や流通に問題がないはずの日本で、なぜフードロスが起きるのでしょうか?原因は家庭での料理の作りすぎや食材の買いすぎ、コンビニ・外食産業での売れ残りや食べ残しにあります。

2020年度の日本の食料自給率は37%で、残りの63%は海外からの輸入です。しかし、せっかく輸入した食料の多くは、捨てられてしまっているのが現状です。

参考:日本の食料自給率:農林水産省

食料不足の人々のために今日からできること

食料不足を改善するために、わたしたちは何ができるのでしょうか?食料の生産量を増やすのは難しいかもしれませんが、食料を大切にすることなら可能なはずです。今日からでも始められる取り組みを、いくつか覚えておきましょう。

食品をできるだけ残さない

食品はできるだけ残さない工夫をしましょう。料理を作るときは食べきれる量だけを作り、どうしても残ってしまう場合は保存して次の食事で食べます。外食するときも、注文しすぎに注意しましょう。

また、消費期限(安全に食べられる期限)と賞味期限(品質が変わらずおいしく食べられる期限)の違いを知っておくことで、まだ食べられるものを捨ててしまうミスも防げます。

買い物では消費期限の近いものを購入し、その日のうちに使い切るのもおすすめです。消費期限が近いと値引きされている商品が多いので、食費の節約にもなるでしょう。

支援団体に寄付をする

食料不足に苦しむ人たちに、余った食料を直接届けるのは現実的ではありません。しかし、食料問題に取り組んでいる支援団体に、寄金や寄付という形で協力することは可能です。

さまざまな団体の活動内容を調べて、自分が納得できる寄金先を選ぶのがポイントです。

例えば、世界中の困難な状況にある子どもたちに長期的な支援を行っているワールド・ビジョンの『チャイルド・スポンサーシップ』では、毎月4500円の寄金を受け付けています。

国連WFPでは学校給食支援をはじめとしたサポートに、毎月1000円からで寄金が可能です。

参考:
チャイルド・スポンサーシップで子ども支援に参加する|国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパン
寄付する・支援する|World Food Programme

環境問題にも関心を持つ

食料不足は、地球温暖化をはじめとする環境問題も関係しています。

IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)では、地球温暖化によって平均気温が1.5度上昇するだけでも、世界の多くの地域で豪雨が増える可能性が指摘されました。このまま温暖化が進めば、度重なる水害で不作になる地域が増えるかもしれません。

また、温暖化で米や麦・トウモロコシの収穫量だけでなく、栄養成分も減るという予想もあります。

ごみになって焼却される食品が増えれば、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量も増えます。自分が食べずに捨てた食料が地球温暖化につながると考えれば、無駄にしてはいけないと思えるのではないでしょうか?

参考:環境省_気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)サイクル

まとめ

食料不足は、いま飢餓にあえいでいる人々だけの問題ではありません。わたしたちが海外から輸入している食料や何気なく捨てている食料も、広い意味では食料不足の一因といえるのです。

食料を大切にするのはもちろん、食料の生産に影響を及ぼす地球環境の変化にも関心を持ちましょう。世界中の一人一人が意識し、できる取り組みを実践していくことで、食料不足の改善に期待できるはずです。