地球温暖化は、異常気象や疫病の増加など、地球上のさまざまな問題を引き起こす原因として対策が急がれています。そもそも地球温暖化は、なぜ起こるのでしょうか?現状と予測も踏まえ、国内外の取り組みや個人ができる対策と併せて解説します。

知っておきたい地球温暖化の原因と現状

地球温暖化は、人間の快適な暮らしと引き換えに起こった問題といっても過言ではありません。具体的には何が原因で地球の温度が上昇してしまうのでしょうか?温暖化の現状や、対策しなかった場合の予測と併せて解説します。

二酸化炭素やメタンが主な原因

地球温暖化の原因は、『温室効果ガス』です。温室効果ガスの代表格としては、二酸化炭素とメタンが挙げられます。

特に二酸化炭素は、人間の生活と深く関係している気体です。ガソリンの燃焼や発電・ごみの焼却などによって発生します。排出量は文明の発展とともに増加し、森林の減少もあいまって地球上の二酸化炭素は増え続けているのが現状です。

一方、メタンの発生源としては、家畜(牛や豚)のゲップや化石燃料・天然ガスの掘削が挙げられます。人口増加や人間の食生活の変化によって、二酸化炭素と同じく増加の一途をたどっているのです。

参考;温室効果ガスの種類|気象庁

温暖化のメカニズム

地球は太陽からの熱で暖められており、温度が上がった地表は空気中に熱を放射します。二酸化炭素をはじめとする温室ガスは放射熱をとらえて吸収・再放射し、大気を温める仕組みです。

この一連の現象は、『温室効果』と呼ばれています。温室効果そのものは決して悪いことではありません。人間が生存・活動していくためには、一定以上の暖かさは必要です。

しかし、温室効果ガスが増えすぎると、温室効果が過剰に促進されます。気温が上がりすぎたり海面の温度が高くなったりと、人間や他の動植物に悪影響を及ぼす現象は大きな問題です。

温暖化の現状と今後の予測

気象庁の資料によれば、1891年の統計開始以来、100年あたり0.72℃のペースで世界の平均気温が上がっています。平均気温の上昇に伴い、平均海面水位も1901〜2010年までの110年間で約19cm上昇しました。

このような状況の中でも、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの排出量は増え続けています。もし対策をとらなければ、今後はどうなるのでしょうか?

国連IPCC(気候変動に関する政府パネル)の第5次評価によると、今後100年間で平均気温が2.6~4.8℃上昇すると予測されています。厳しい温暖化対策をとったとしても0.3~1.7℃上がる可能性があるため、楽観はできないでしょう。

参考:
地球温暖化の現状と将来予測|気象庁
IPCC 第5次報告書の概要|気象庁

自然界にもたらす主な影響

地球温暖化による平均気温が上昇すると、自然界にはどのような影響があるのでしょうか?考えられる主な影響を見ていきましょう。

海面の上昇

気温の上昇によって北極・南極や氷河の氷が溶けてしまうのも、温暖化が自然界にもたらす影響です。海にある氷が溶けても海水の体積は増えませんが、陸上の氷河が溶けて海に流れ込めば海面が上昇します。

南太平洋のツバルやキリバス・インド洋のモルディブなど、海抜の低い島国では水没が心配されており、移住が始まっているところもあるほどです。

日本も無関係ではありません。海面が1m上昇すれば全国の砂浜の9割が失われ、海抜の低い地域では浸水も起こるとされています。

生態系の変化

地球温暖化による急激な環境変化は、生態系にも大きな影響を与えています。気温や降水量の変化は、野生動物が生息していた地域に住めなくなったり、変化に対応できずに絶滅したりする原因です。

温暖化がこのまま進めば、生態系のバランスがどんどん崩れていってしまう恐れがあります。

温暖化に関連した生態系の危機は、陸地だけに起こるわけではありません。温暖化を引き起こす二酸化炭素が溶け込んで海水の酸性化が進めば、植物性・動物性プランクトンやサンゴなどがダメージを受けます。

さらに、それらをエサやすみかとしている海洋生物が減少・絶滅する可能性もあるでしょう。生態系のバランスを保つためにも、二酸化炭素を削減する取り組みが急がれます。

災害の増加

地球温暖化によって、世界各地で自然災害も増えています。回数だけでなく、規模も増大しているのが特徴です。日本では『ゲリラ豪雨』と呼ばれる局地的な豪雨も、地球温暖化の影響とされています。

例えば、2017年7月の九州北部豪雨では、1日で7月の月降水量平年値を超える雨量を記録しました。

前線(冷たい空気と暖かい空気がぶつかる部分)では温度差によって雲ができるため、暖かく湿った空気が大量に流れ込むと、強い雨が降りやすくなるのです。

世界的に見ても、年間の降水量に変化が現れている地域は多くあります。例えば、タイのチャオプラヤ川流域では、2008~2011年の3年間で7~9月の累積降水量が約200mmも増加しました。

チャオプラヤ川の下流域は、多くが低い平地です。上流で大雨が降れば長期間にわたって、首都バンコクを含む広い範囲が浸水すると予想されています。

参考:
平成29年7月九州北部豪雨の被害状況と対応等について|内閣府
タイの洪水について

生活に与える主な影響

地球温暖化は、間接的に人間の生活にもさまざまな影響を及ぼします。個人レベルでも、猛暑や酷寒で冷暖房費がかさむ・暑さで庭木が枯れるなどの困りごとがあるでしょう。地球規模では、さらに深刻な問題が起こっています。

農業への打撃

地球温暖化による気候変動は、農業にも打撃を与えます。気温や降水量の変化によって、作物の生育が不順になったり収穫量が増減したりする可能性があるためです。

特にもともと気温の高い地域では、平均気温が1~2℃上昇すると作物の生産性が落ちるとされています。

また、全体的に平均気温が上昇すれば、本来は涼しいはずの時期も暑い日が続くようになるでしょう。果実の色づきが悪くなったり、農作物が発育不良を起こしたりします。

安定した生産が難しくなれば、農作物の供給量が不足する事態にもなりかねません。

参考:食料安全保障について|農林水産省

病気の拡大

平均気温が上昇すれば、平均水温も同様に高くなります。水温が上がると水中のコレラ菌や大腸菌などが増えるため、水を媒介した感染症が増える恐れがあります。特に上水道の設備が整っていない国や地域では、被害が拡大する可能性が高いでしょう。

日本でもデング熱を媒介する蚊や、皮膚病や下痢を起こす細菌『ビブリオ・バルニフィカス』が検出される地域・海域が、年々北上しています。平均気温が上昇し、地球温暖化による感染症の危機が高まっているといえるでしょう。

国内外で行われている温暖化への取り組み

地球温暖化の問題は、世界中が一丸となって取り組まなくてはなりません。それぞれの国の環境に合った、独自の対策も必要です。国内外で行われている地球温暖化への取り組みを見ていきましょう。

パリ協定

パリ協定は、2015年のCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)において採択、2016年に発効されました。2020年以降、温室効果ガスの排出を削減するための国際的な枠組みです。主要な温室効果ガス排出国を含む、多くの国が参加しています。

パリ協定では、平均気温の上昇を産業革命前と比べて2℃未満に抑えることを世界共通の目標とし、1.5℃に抑える努力をすすめています。5年ごとに削減目標を提出・更新することは、パリ協定に参加している全て国の義務です。

参考:2020年以降の枠組み:パリ協定|外務省

SDGs

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、貧困や紛争・感染症・エネルギーなど世界に共通する17の問題を、地球全体で解決していくために設定された目標です。

2015年の国連サミットにおいて全会一致で採択され、各国が経済・社会・環境のバランスを保ちながら2030年までの目標達成を目指しています。

SDGsでは、『気候変動に具体的な対策を』という目標が13番目に掲げられています。気候変動や気候変動の影響を軽減するため、必要な対策を講じることが目的です。

参考:SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省

気候変動適応法の運用

『気候変動適応法』とは、地球温暖化による気候変動に対処し、温室効果ガスの削減に取り組むことを目的とする法律です。予測される被害の防止や軽減を図るために、関係者が連携・協働のもとで取り組むべきとされています。

気候変動の増大や将来長期にわたる被害の拡大が予想されることから策定され、2018年に施行されました。

参考:環境省_気候変動への適応

個人や家庭でできること

国単位の取り組みだけでなく、個人や家庭でできる地球温暖化対策もあります。普段の生活を見直して、一人一人ができる行動から実践していきましょう。

電気の使い方を見直す

電気の使い方を見直し無駄遣いをなくせば、エネルギー消費を抑えて二酸化炭素の排出量も減らせます。次のような取り組みなら、家庭でもすぐに実践できるでしょう。

  • 使っていない電化製品のコンセントを抜く
  • エアコンの設定温度は夏28℃、冬20℃を基本にする
  • 照明を蛍光灯からLEDライトに替える


普段の生活を振り返って、電気の使い方が地球温暖化への対策につながると意識してみましょう。電気代も節約できるので一石二鳥です。

グリーンエネルギーを選ぶ

地球温暖化対策の一つとして、太陽光や水力・風力などから生み出される『グリーンエネルギー』を意識的に選ぶのもおすすめです。グリーンエネルギーを提供している電力会社と契約したり、自宅に太陽光発電システムの設置を検討したりしてみましょう。

グリーンエネルギーは化石燃料を使用した火力発電や原子力発電と異なり、資源が枯渇したり廃棄物が出たりする心配がほとんどありません。地球環境にやさしく、二酸化炭素の排出も抑えられるので、地球温暖化対策として効果的です。

なるべく徒歩や公共交通機関で移動する

ガソリンを使用する車やバイクの排気ガスには、多くの二酸化炭素が含まれています。車やバイクの移動は便利ですが、同時に地球環境に影響を与えていることも意識しましょう。

近距離ならなるべく徒歩や自転車で移動したり、バスや電車などの公共交通機関を利用したりするのがおすすめです。バスや電車は一度に多くの乗客を運べるので、自家用車よりも二酸化炭素の排出量が少なく済みます。

歩いたり自転車に乗ったりすればお金がかからない上、運動にもなるでしょう。

まとめ

地球温暖化は、地球に暮らす全ての生物に影響を及ぼす問題です。人間の生活や産業の発展のために地球環境を犠牲にした結果であり、今を生きるわたしたちが改善に取り組まなくてはなりません。

これから生まれてくる子どもたちのためにも、国や自治体・個人を問わず、対策を講じて実践していく必要があります。一人一人が地球温暖化の原因と影響を意識して、二酸化炭素の排出量を減らすように心がけていきましょう。