海に囲まれた日本は海洋資源に恵まれ、魚介や海藻など食の楽しみを享受できます。しかし、海が汚染されるとそこに住む生物に害を与え、結果として私たちにも影響を及ぼすでしょう。海洋汚染の原因や影響を解説し、一人一人にできることを紹介します。

海洋汚染の現状

美しく広がる海には、私たち人間によって起こったさまざまな問題が沈んでいます。はじめに、海洋汚染の現状について説明します。

そもそも海洋汚染とは?

海洋汚染とは環境問題の一つです。主な原因としては以下のようなことが考えられます。

  • 工場や家庭の排水
  • プラスチックゴミ
  • 船舶事故での油や有害物質の流出

このような、有害な結果をもたらすおそれのある物質やエネルギーを、人間が直接的・間接的に海に持ち込み、海を汚すことを『海洋汚染』と呼ぶのです。

海洋汚染が与える影響

私たちが生活する上でゴミの問題は避けては通れません。海にたどり着くゴミには、『漂着ゴミ』『漂流ゴミ』『海底ゴミ』があります。

いずれもレトルト食品の袋やペットボトル、ストローなどのプラスチックゴミが多く、使っては捨てる我々の生活が海に反映された形となってしまっているのです。

クジラやウミガメがプラスチックゴミを食料と勘違いして食べてしまい、体に異常をきたして、結果、浜に打ち上げられるといった被害が今も起きています。

プラスチックゴミを含む海洋汚染は、日本だけの問題ではありません。世界をつなぐ海は自国のゴミを他国に運ぶ場合があり、世界規模の問題といえるのです。

海洋汚染の原因

海洋汚染の現状について解説したところで、次は海洋汚染の原因について説明します。

海洋ゴミ

海洋ゴミは海洋汚染の主な原因として世界的に問題視されています。その海洋ゴミの中でも、プラスチックゴミ、プラスチックが微細化したマイクロプラスチックの影響が特に深刻です。

プラスチックは加工しやすく軽量で丈夫なことから、生活のあらゆるところで使われています。例えば、レジ袋・ペットボトル・食品の容器などです。

プラスチックゴミは、世界中で年間約800万トンも流出していると試算されています。これにより、ウミガメや海鳥などの生物がプラスチック片を含む海洋ゴミを食べてしまうといった問題が起こっているのです。

そのほかにも、プラスチックゴミが微細化したマイクロプラスチックが生物の体内に入ることで有害な作用をもたらしています。

参考:環境省_令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 

工業・生活排水

工場の排水には有害物質や有機物が、生活排水には多量の窒素やリンなどの有機物が含まれており、これらが海洋汚染を促しています。

工場排水に含まれる有害物質が海に流出したことで、人体に影響を及ぼした事件といえば、四大公害病の一つである水俣病が挙げられます。水俣病は工場排水に含まれる有機水銀によって汚染された魚介類を、周辺住民が日常的に食べたことで発生しました。

工場排水、もしくは家庭排水に含まれる有機物は、富栄養化(海洋に含まれる栄養分が増えすぎる状況)の原因となります。富栄養化した海はプランクトンの異常増殖(赤潮)を引き起こし、水中の酸素を枯渇させてしまうのです。結果、海洋生物の酸欠による大量死が発生してしまいます。

船舶事故で漏れた油

船舶事故で流れる油は海洋生物を死滅させる原因になるだけでなく、海洋環境そのものを大きく変えてしまいます。

海上保安庁が毎年公開している『海洋汚染の現状について』によれば、令和2年では、海洋汚染確認件数のうち油による海洋汚染は全体の63%を占めていました。

排出原因は船舶海難(船舶が救助を求める状況になること)のほかに、不適切なタンク計測やバルブ操作などの作業中における取り扱い不注意と報告しています。油の流出は事故だけでなく、人の操作ミスによって起こるものもあるのです。

参考:令和2年の海洋汚染の現状について|海上保安庁

海洋汚染による身近な影響

海洋汚染は、先述のような原因によって引き起こされていることが分かりました。海洋汚染による身近な影響について説明します。

沖縄のサンゴ礁への影響

沖縄のサンゴ礁は現在、海洋汚染や地球温暖化による環境ストレスにさらされ、危機的な状況に陥っています。

海洋汚染が起因の環境ストレスは次の通りです。これらのストレスにより、サンゴは衰退の一途をたどっています。

ストレス要因影響
プランクトンの増殖プランクトンの増殖によって海水の透明度が下がるとともに、サンゴに届く光量が減ることで、サンゴの成長が阻害される。
海藻類の増加海中の富栄養化や植食動物の減少により、異常繁殖した海藻類によってサンゴ幼生が新たな海域に広がらない。
サンゴの病気海洋汚染を含むストレスで弱ったサンゴに細菌による壊死や骨格形成異常が広がっている。

人体への影響も無視できない

海洋汚染による人体への影響も無視できません。特に問題視されている課題が、マイクロプラスチックによる環境ホルモンです。

環境ホルモンは、内分泌系の機能をかく乱し、変化を与えてしまう物質です。内分泌系の機能には、人間の体を調整する働きがあるため、男性の精子数減少や女性の乳がん増加などの異常が指摘されています。

また、環境ホルモンが影響したと考えらえている事例として、巻貝であるイボニシの雌の雄化があります。雌の雄化の原因は、貝の付着を防ぐ塗料として船底や魚網へ使われた有機スズ類による環境ホルモンが原因の一つであるといわれています。

私たちが海のためにできることは

海洋汚染を目の当たりにして、私たちには何ができるでしょうか。日々の生活の中で、少しずつでも実践していこうという意識が必要です。

3Rを意識して生活する

海洋ゴミを出さないために、次のことが掲げられています。

  • ゴミの総量を減らすReduce
  • ものを再利用するReuse
  • ものを分解、再生産するRecycle


これら3つの頭文字をとって「3R」と呼びます。この3Rを意識して生活することが大切です。具体的な行動例は以下の通りです。

3R行動例
Reduceマイバッグを持参し、できる限りレジ袋を使わない。詰め替え容器に入った製品を選ぶ。ものをできるだけ長く大切に使う。
Reuse不用品をフリマアプリで売ったり購入したりする。リターナブル容器を使った商品を選び、使い終わったらリユース回収に出す。
Recycle資源ゴミの分別をする。リサイクル製品を使う。

ボランティアへの参加

清掃活動や啓蒙活動にボランティアとして参加するのも一つの手段です。

海に流れ着く海洋ゴミの量は非常に多く、一度掃除をしたからといってなかなか減るものではありません。そのため、定期的な掃除が必要になってきます。また、海は広いため常に人手不足の状態です。海の清掃活動ボランティアに積極的に参加することは、海洋を守る上で大切なことといえます。

海洋問題の啓蒙活動に参加することも一つの方法です。清掃活動を行う団体の中には、海洋ゴミ問題を広く伝えるイベントを催していることがあります。このようなイベント開催も人手不足である場合が多く、ボランティア参加によって、海洋ゴミ削減の手助けができるでしょう。

エコ容器を活用する

スーパーや飲食店で弁当や生鮮食品を買うときは、エコ容器を使っているものを買うように心がけるのも大切なことです。

エコ容器とは、環境に配慮した素材を使用した容器を指します。例えば、さとうきびの搾りかすから作られたバガス容器や、管理された木材を使ったFSC(森林管理協議会)認証の紙容器などがあります。

これらの容器を積極的に扱うスーパーや飲食店を利用することで、間接的に海洋ゴミ削減へ貢献できるでしょう。

海洋汚染に関する寄付はこちら

https://congrant.com/project/kifuzaidan/4394

まとめ

海洋汚染の概要から、その原因と日本で起こっている被害を解説し、一人一人ができる行動例を紹介しました。

海洋汚染は将来のために取り組まなければならない問題です。これを機に「海洋汚染を解決するために、何ができるか」を考え、自分なりの行動を始めてみてください。