将来を担う子どものために、自分のお金を役立てたいと考える人も多いのではないでしょうか。貧困対策から被災者・交通遺児への支援まで、教育事業における寄付金の用途はさまざまです。失敗しない寄付団体の選び方や、おすすめの寄付先を紹介します。

なぜ教育に寄付が必要なのか

子どもの教育支援活動のために、寄付を募る団体はたくさんあります。教育環境が充実しているように見える日本で、なぜ多くの寄付が求められているのでしょうか。主な理由を見ていきましょう。

子どもの貧困率の増加

厚生労働省が2019年に調査した結果では、2018年の子どもの貧困率は13.5%でした。日本では18歳未満の子どものうち、約7人に1人が貧困状態にあるのです。

日本の貧困率は、衣食住にも事欠くような『絶対的貧困』ではなく、『相対的貧困』で表されます。相対的貧困とは、国民を可処分所得(収入から税金や保険料を引いた手取り収入)が高い順に並べたとき、平均値的な収入のさらに半分しか所得がない世帯を指します。

親子2人の世帯で例えると、公的な給付金も含めた毎月の所得が、14万円以下の場合『貧困』となります。所得が月14万円に満たない家庭では、教育にお金をかける余裕などないのです。

教育事業に寄付することで、貧困家庭の子どもの学習や社会体験のチャンスを増やすことに貢献できます。

参考:調査の概要|厚生労働省

貧困による教育格差の広がり

日本では、公立の小・中学校の場合授業料は無償で通うことができますが、学校外での教育にはとてもお金がかかります。塾や習い事で教育の機会を十分に与えられる子どもと、そうではない子どもとの間には、学力に差が生じてしまうでしょう。

貧困家庭の親は収入を得るために忙しく、家で勉強を見てあげられない傾向にあるのも学力に差がつく原因とされています。学力差は年齢が上がるほど広がり、高校や大学への進学が難しくなります。進学できなければ就職が不利になり、経済的に安定しません。

貧困によって十分な教育を受けられなかった子どもは、大人になっても所得を増やせず、その子どももまた貧困状態になる可能性が高いとされています。貧困の連鎖を断ち切るためにも、教育事業への寄付は不可欠といえるでしょう。

寄付金は何に使われる?

教育事業に寄付した場合、お金は何に使われるのでしょうか。具体的な用途を紹介します。

教材や備品の購入

子どもに学びの場を提供する活動を行っている団体では、主に寄付金は教材や備品の購入に活用されています。日本では、東日本大震災によって多くの子どもたちが安心して学べる場所を失いました。

世界にも、国の情勢により満足な教育を受けられない子どもが大勢います。学ぶ環境が整っていない場所に学校や放課後教室などを用意し運営していくためには、多額の費用がかかります。

教育現場には、文房具や問題集を始め、スポーツ用品・黒板・電子デバイス・机・椅子など、さまざまな物品が必要です。寄付が集まれば集まるほど多くの教材や備品を用意でき、子どもたちは充実した環境で学べるようになります。

学習や食事などの支援活動

学校には通えるものの、経済的に困窮している子どもを支援する団体もたくさん存在します。支援の内容は、主に学校外での学習機会や食事の提供です。

この場合の寄付金は、親が不在がちで1人で留守番をしている子どもや、栄養バランスのよい食事をとれない子どもに、安心して過ごしてもらうために使われます。

近年はオンライン学習が普及したこともあり、インターネット環境がない家庭を支援したり、ネットで子どもの学習相談にのるといった取り組みも増えています。

寄付先を選ぶポイント三つ

大切なお金を有効に使ってもらうためにも、寄付先は慎重に決めましょう。教育事業の寄付先を選ぶポイントを三つ紹介します。

信頼できる団体かどうか

寄付先の信頼性は、最も重要なポイントです。寄付金が目的以外のことに使われてしまうと、寄付する意味がありません。

寄付先を探すときは、ホームページで以下の点をチェックしましょう。

  • 法人として3年以上の活動実績がある
  • 活動内容や財務情報を公開している
  • 寄付者が多い、継続的な寄付者がいる

法人化している団体は、毎年所轄の官庁に事業報告書や決算書などを提出したり、一般に広く公開するといった義務があります。また、寄付金額や寄付者数が多い団体ほど、活動の質・量ともに高いといえるでしょう。

事業を長く継続し、活動内容が明確で多くの支持を集めている団体なら、寄付金が怪しい用途に使われる心配は少ないと判断してよさそうです。

自分が寄付をする目的や考え方と一致するか

教育の支援方法にも、さまざまな種類があります。例えば、『親のいない子どもへの学費援助』と『貧困家庭の子どもへの食事提供』では、寄付金の使い道が大きく変わってきます。

これまで見過ごされてきた問題や、時勢に合った新しい問題に取り組む団体を見つけ出し、応援したいと考える人もいるでしょう。

あなたが心から応援したいと思える活動に出会えれば、寄付への満足度がより高まるはずです。寄付先の理念や活動内容をよく比べて、共感できる団体を選びましょう。

寄付金控除の対象団体か

『寄付金控除』とは、納税者が国や地方公共団体、特定の法人に寄付した場合、所得控除を受けられる制度です。所得控除を受けられれば、所得税を節税できます。

寄付先選びで迷ったら、寄付金控除の対象かどうかで判断してもよいでしょう。寄付金控除の対象となる法人の例は、以下の通りです。

  • 特定NPO法人
  • 特例認定NPO法人
  • 公益財団法人
  • 公益社団法人
  • 独立行政法人
  • 社会福祉法人
  • 学校法人
  • 更生保護法人

おすすめの寄付団体を紹介

教育に関する寄付を募集している団体は、国内に多くあります。初めての人でも安心して寄付できる、おすすめの団体を見ていきましょう。

あしなが育英会

『あしなが育英会』は、主に親を亡くした子どもを対象に支援をしている団体です。交通事故で親を失った子どもの救済運動を原点としており、発足から50年以上の歴史を持っています。

現在は支援の対象を交通事故被害者に限らず、病気や災害の遺児・親が働けない家庭の子ども・アフリカの遺児にも広げています。

奨学金事業・心のケア事業・アフリカの教育支援事業をメインに活動しており、定額寄付の場合は使いみちを指定することも可能です。

あしなが育英会

認定NPO法人 カタリバ

『カタリバ』は、中学生や高校生などの『10代の子ども』に対して、心の支えとなる団体です。生まれた家庭や育った場所、災害など、子どもにはどうすることもできない環境の格差により、将来の可能性が閉ざされるケースは少なくありません。

カタリバでは格差に悩む子どもに居場所を提供し、学習や食事などの支援を通して交流を深める活動を展開しています。大学生や社会人のスタッフが親身になって語りかけ、子どもが将来への希望や意欲を持てるようにサポートします。

高校生向けの出張授業やオンライン学習支援プログラムなど、10代に寄り添う企画を次々と打ち出す活動に賛同する企業も多く、メディア掲載実績や受賞歴も豊富です。

認定NPO法人カタリバ | 未来は、つくれる。

認定NPO法人 フローレンス

『フローレンス』は、子育てに立ちはだかるさまざまな社会問題の解決に取り組む団体です。日本には、子どもの預け先が見つからないために思うように働けない親がたくさんいます。

親の仕事が制限されれば貧困に陥る確率が上がり、子どもの将来にも大きく影響するでしょう。フローレンスでは誰もが安心して働ける社会を目指すため、主に病児や障害児を預かる仕組みづくりに取り組んできました。

経済的に困窮しやすい『ひとり親家庭』や、精神的に孤立しがちな親への支援も手厚く、社会全体で子育てを支えたいと考える人におすすめの団体です。

認定NPO法人フローレンス | 新しいあたりまえを、すべての親子に。

まとめ

貧困による教育格差や保育園不足など、子どもと親を取り巻く問題は山積しています。問題解決に尽力する支援団体も多く、寄付先には困らないほどです。

教育事業への寄付は、未来を切り開く子どもたちへのエールとなります。1人でも多くの子どもが笑顔になれるよう、寄付先をしっかりと選んであなたの寄付金を役立ててもらいましょう。