障がい者だけではない雇用の多様化を促進

愛知県に本拠を置き、全国に多くのフランチャイズ店を展開しているスイーツブランド「久遠チョコレート」。チョコレート好きならその名前を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。一般社団法人「ラ・バルカグループ」が運営する久遠チョコレートの働き手は約7割が障がい者です。今回は「全ての人々がかっこよく輝ける社会」を目指して、さまざまな取り組みを行う久遠チョコレートをご紹介します。

シングルマザーや引きこもりの人たちも雇用

久遠チョコレートで働く人たちは主に障がい者ですが、ほかにもさまざまな立場の人たちがともに働いています。シングルマザーや引きこもりだった方、子育てや介護で時間の融通を希望する方、悩みを抱える若者、LGBTQの方など。「人はみんなデコボコあっていい」というのが久遠チョコレートの想い。多様な人々の雇用を促進するために、特性や状況によって柔軟な働きを可能にしているため、皆が自分にできることに誇りをもって、プロのショコラティエとして仕事に取り組んでいます。

正当な報酬を得られるように

久遠チョコレート代表の夏目浩次さんは、もともと建築設計コンサルタント。駅のバリアフリー設計などに携わっていたことをきっかけに福祉事業に関心を持ちます。その後障がい者雇用の実態を知り、あまりの工賃の低さに驚き憤ったことをきっかけに、自ら福祉の世界へ飛び込みました。

一般就労が困難な障がい者は、主に「就労継続支援B型事業所」という福祉作業所で就労することがほとんどです。福祉作業所では労働法の最低賃金は適用されないため、工賃は月額平均で1万5千程度でそれ以上に低いこともあります。夏目さんは障がい者の雇用の価値を上げ、正当な報酬を払えるようにすることが必要だと考え、工賃の向上を目指します。

「福祉」ではなく「ビジネス」として誇りを持つ

夏目さんは善意に頼るだけの福祉事業ではなく、ビジネスとして価値ある商品を生み出すことが障がい者の労働価値を向上させることになると考えました。試行錯誤を繰り返す中、ショコラティエの野口和男さんとの出会いを機にチョコレート作りを開始します。チョコレートの製造は良い原料を使って正しい手順で行えば難しくはなく、誰でも作ることが可能だと野口さんは語ります。

どのような人でも作業工程に関わることが可能なチョコレートは、まさに障がい者に寄り添うスイーツでした。ドライフルーツやナッツを混ぜて作るテリーヌチョコレートなどオリジナル商品を開発し、久遠チョコレートは、「チョコレートのトレンドを体現する存在」として注目されていきます。

一流スイーツブランドとして

現在久遠スイーツは全国に52拠点あり、約15億円の年商を上げています。B型支援事業所の障がい者雇用では月額約6万円ほどの工賃を支払っており、一般的な作業所の工賃を大きく上回っています。夏目さんの目標は「みんなで世界を獲る」こと。そのために知名度を上げることはもちろん、経済的にわかりやすい成果として「上場企業」を目指しています。そして社会を変えるブランドとなることが目標です。

「久遠チョコレート」のSDGs推進とは

久遠チョコレートは、2014年に「全国夢のチョコレートプロジェクト」を開始しました。このプロジェクトは全国の障がい者や事業所に対して、チョコレートの魅力を通して社会参加と自立を促し、所得のアップを行うものです。プロジェクトに賛同した全国のデパートや直営店などが協力して、順調に運営が拡大されています。

また2018年には、株式会社ベルシステム24ホールディングスと「SDGsの推進と持続可能な地域づくりに関する連携協定」を結び、チョコレート工場の共同運営を開始。愛知県に「QUONチョコレート豊橋SDGsラボ」が開設されました。

ジャパンSDGsアワードにて内閣官房長官賞を受賞

このような活動が認められ、久遠チョコレートは2018年に第12回ジャパンSDGsアワードにて「内閣官房長官賞」を受賞したのです。SDGsへの取り組みとしては、目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、目標8「働きがいも経済成長も」、目標10「人や国の不平等をなくそう」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の5つの目標に対しての活動が大きく評価されました。

まとめ:チョコレートで世界を笑顔に

不平等をなくし、多様な人たちが皆で「カッコよく」働ける社会を目指す久遠チョコレートの取り組みをご紹介しました。福祉としてだけではなく、ビジネスとしての成功を掲げて、働く障がい者の労働価値を上げることは、まさに「誰も取りこぼさない」持続可能な社会の在り方のひとつです。

多様な人々が作るチョコレートで、世界中を笑顔にしたいという久遠チョコレートの願いは、これからも大きく躍進していくことでしょう。